オープンソース・ソフトウエアのビジネス活用は,もはや当たり前になった感がある。ガートナージャパンの調査によれば,既に半数以上の自治体がなんらかの業務にLinuxを利用しているという(関連記事)。特にデータベース分野の伸びが著しく,既に米国企業の約3分の2が,何らかの業務にPostgreSQL,MySQL,Firebirdといったオープンソース・データベースを導入している(エヴァンス・データ・コーポレーション社の2005年冬データベース開発調査による)。

 オープンソース・ソフトウエアの普及にともない,エンジニアの技能に対する認定資格制度も増えている。資格は自分の技術をアピールする大きな武器になる。LinuxではLPI認定やComptia Linux+といった一般的な資格に加え,RHCE,Turbo-CEなど,各ディストリビュータによる資格もある。MySQLのように企業が開発しているソフトウエアでは,開発元の企業が直接,技術者の認定を行っている例もある。

 「PostgreSQL CE」は,オープンソースのデータベース管理システム「PostgreSQL」に携わるエンジニアの技能を評価するための認定資格制度だ。昨年10月から開始された。PostgreSQLは日本国内では特に人気が高く,既に多くの企業で活用実績がある。富士通が社員400人の認定取得を目指すなど,積極的にPostgreSQLエンジニアを支援する企業も出始めているようだ。

 今回は,オープンソース・ソフトウエアに携わるエンジニアの一人として,筆者自身がPostgreSQL CEに挑戦してみた。

試験対策講座を受講

 日頃業務でPostgreSQLを扱う身であっても,試験を受けるとなれば,やはりきちんと基礎から勉強し直しておく必要はあるのではないか。そう考え,セミナーを受講することにした。SRAが開催する2日間のセミナー,「PostgreSQL導入トレーニング」に参加してみた。

PostgreSQL導入トレーニング
 PostgreSQL CE Silverの問題は「PostgreSQLの一般的特徴」10%,「運用管理」40%,「開発/SQL」50%の割合で出題される。「PostgreSQLの一般的特徴」は,ライセンスや直近のメジャー・バージョンアップで変更された内容,リレーショナルデータベース全般に関する一般的な知識。配点の比率は低いが,基本的に暗記モノなので,点の取りやすい部分とも言える。「運用管理セクション」は,インストール手順や設定ファイルの記述,バックアップなどの知識が必要になる。「開発/SQLセクション」は,SQLの基本的な文法とPostgreSQLの関数などだ。セミナーの内容も,この試験の出題範囲に沿ったものとなっている。

 PostgreSQLも最近は比較的大規模なシステムに適用されるケースが増えており,アプリケーション開発から運用まで,すべての業務をひとりで担当するエンジニアはむしろ少数派だろう。日頃担当していない業務に関しては,どうしても知識が乏しくなりがちだ。セミナーでは特に自分の弱点を強化することを心がけた。

 セミナーの1日目は,PostgreSQLの概要やインストール手順,基本的なSQLの構文を学ぶ。このセミナー自体が少人数で行われているため,講師も個々に対応してくれる。初めてPostgreSQLに触れる人でも,理解できそうに感じた。2日目は関数やトリガ,外部キー,ルールなど,多少高度な内容も含まれてくる。筆者も自分では結構知識があるつもりでいたが,普段使用頻度の高くない機能に関しては初めて知ることも多かった。

受験申し込みと事前準備の注意点

 次は受験申し込みだ。試験の運営を担当している「ピアソンVUE」のWebサイトでPostgreSQL CEの受験予約を行った。

 注意が必要なのは「再受験規約」と「身分証明書」だ。

 再受験規約は,試験に合格できなかった場合の再挑戦に関する取り決めだ。再受験規約を確認し,承諾するページには記述がないが,PostgreSQL CEでは不合格から7日間は再受験ができないルールとなっている。

 身分証明書は「2種類」必要になる。一つは,例えば運転免許証やパスポートなど,必ず写真で本人が確認できるものでなければならない。もう一つは,本人の署名が記載されていることが必要だ。身分証明書を忘れてしまったり,一つしか用意していなかったために試験が受けられなかったことも実際にあったそうだ。筆者の場合は,運転免許証とクレジットカードを持参した。

 なお,運転免許もパスポートもクレジットカードも持っておらず,2種類の身分証明書が用意できない場合,ピアソンVUEのWebサイトから,PDF形式の「ピアソンVUE試験用身分証明書」をダウンロードし,印刷して写真を貼付し,必要事項を記入すれば身分証明書として使用できる。ただし,この身分証明書には「証人」の署名も必要になる。

 受験を申し込んだ後はひたすら勉強だ。とはいえ,受験勉強に専念できた学生時代と違い,社会人,しかもエンジニアという極めて多忙な職業を選んでしまった我々にとって,学習のための時間を捻出するのはなかなか容易ではない。

 学習をできるだけ効率的に進めるためには,出題されやすいポイントを絞った参考書が役立つ。前述の対策講座で配布されるテキストは出題範囲をすべてカバーしている。独学で頑張る場合や,実際に問題を解いて試験に慣れておきたい場合には,技術評論社の「絶対合格! PostgreSQL CE認定試験【Silver】」(宮原徹著)がお勧めできる。