米MicrosoftでLinuxとオープンソースに対する戦略を担当するBill Hilf氏。同社は「Get The Fact」と呼ぶキャンペーンで,同社が委託した調査結果などを引用した比較広告を展開している。米Novellなどは反証を展開しているが,それへの反論を尋ねた。また,かつて米IBMでLinuxを担当していたという同氏のオープンソースに対する思いなどを聞いた。(聞き手はIT Pro編集 高橋信頼)

――経歴と現在の仕事をお教えください。

Bill Hilf氏

 ソフトウエア開発会社や,ECサイト米eToysの開発部門で技術者として働いてきました。Microsoftに移る前は米IBMでLinux担当のシニア・アーキテクトを務めていました。1年前にMicrosoftに移り,Linuxとオープンソース・ソフトウエアに対する戦略を担当しています。

――MicrosoftのLinuxとオープンソースに対する戦略は,どのようなものですか。

 MicrosoftのWindowsとLinuxは競合する技術ですが,どちらもITの世界で現実に存在するものです。商用ソフトウエアがフィットする領域もあるし,オープンソースのコミュニティ開発モデルがフィットする領域もあります。

 ご存知でしょうか,Microsoftも,オープンソース・ソフトウエアを公開しています。Windows Installer XMLと呼ぶツールで,オープンソース開発サイトのSourceForge.netで公開しています。

――どのような領域にオープンソースが適していると考えていますか。

 難しい問題ですが,普及して,コモディティ(日用品)になった領域です。Sambaは最初のファイル・サーバーではなく,Linuxは最初のOSではないし,Apacheは最初のWebサーバーではない。このようにコモディティになった領域では,コミュニティによる開発モデルが有効です。

――最初のWebサーバーであるCERN httpdはオープンソースであると理解しています。bindやTCP/IPなど,インターネットの多くの技術のように,オープンソース・ソフトウエアとしてイノベーションが起き,広まったケースもたくさんあります。

 それらは大学や研究機関で開発されたものです。コミュニティによって開発されているLinuxの機能は,いずれも過去のOSによってすでに実現されているもので,イノベーションはありません。

 例えば自動車は,分散して開発したものを持ち寄って完成させることは困難です。一箇所で共通のも目的にフォーカスした開発を行う必要があります。そのような環境を整備するには,資金が必要です。それは企業の投資により行われるものです。Microsoftは年間約70億ドルを研究開発に投じています。IBMやHP,Intelなども同様に多くの研究開発投資を行っています。

――ただ,ソフトウエアは実験設備ではなく,人の頭脳から生まれます。そのため,他の工業製品と異なるというのがオープンソース・ソフトウエア開発者の主張です。

 それではWindowsのイノベーションとは何でしょうか。GUIを備えたOSには,Windowsに先立ちMacintoshがあり,米XeroxのPARC研究所で開発されたワークステーションがありました。

 ネットワークやデータベース,グループウエアなどを統合して使いやすくしたことです。これにより,一般家庭でも使えるようになった。それをイノベーションと呼ばない人もいるでしょうが,私はイノベーションであると考えています。