すでに本連載でも何回か取り上げたPostgreSQL 8.0が,2005年1月19日,ついに正式リリースされた。
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図1●PostgreSQLのバージョンごとのソースコード行数 |
開発者からのオフィシャル・プレスリリースで「Red Hat,富士通,Afilias,SRA,2nd Quadrant,Command Prompt.などの十数社数百人の個人開発者が,8.0に対してかつてないほどの大量の機能追加を行いました」と報告されているように,PostgreSQL 8.0の開発は多くの個人,企業によるボランティア作業の成果である。そうでなければこれほど大規模なオープンソース・ソフトウェアの開発は達成できなかったであろう。
PostgreSQL 8.0はポイント・イン・タイム・リカバリ,テーブル・スペース,バッファ・マネージャの改良など,PostgreSQLをより大規模なエンタープライズ向けに適用するために大幅に機能拡張されている.これは,PostgreSQLが従来から目指している路線上にあり,そういう意味では今までのバージョンアップと変わりないが,改良の規模において今までのバージョンとは明らかに一線を画していると言えよう。
また,PostgreSQLははじめて正式にWindowsプラットフォームに対応した。現状では,Windows市場はUNIXやLinux市場に比べると桁違いに大きい。この大きな市場でPostgreSQLが使用できるようになり,今まで以上にPostgreSQLの普及が加速するものと期待されている。特に欧米では日本に比べるとPostgreSQLの普及が遅れていたが,WindowsプラットフォームへのPostgreSQLの進出がこうした状況を打開する糸口になるかも知れない。
なお,例によってPostgreSQLユーザ会のサイトでPostgreSQL付属ドキュメントを日本語訳したものが公開されている。今回の公開はPostgreSQL 8.0の正式リリースから遅れることわずか2日後に行われた。PostgreSQLの付属ドキュメントは書籍にして1000ページを越える分量に達している。このような膨大なドキュメントをタイムリーに翻訳した日本PostgreSQLユーザ会,とりわけ文書・書籍関連分科会の方々に拍手を送りたい。
では,PostgreSQL 8.0の主な新機能を見ていこう。
詳細については,上記ドキュメントのリリースノート「E.1.1 リリース8.0」を参照するか,近日SRAのサイトで公開予定の「PostgreSQL 8.0について」をご覧いただきたい。
はじめてオフィシャルにWindowsプラットフォームに対応
PostgreSQL 8.0は,はじめてオフィシャルにWindowsプラットフォームに対応した。サポートするバージョンはWindows 2000,Windows XP,Windows 2003 Serverである。Windows 95,98,Meはサポートされていない。また,Windows NT 4.0も公式にはサポートされていない(実際にはいくつかの制限付でサポートされている。詳細は「Running & Installing PostgreSQL On Native Windows FAQ」を参照のこと)。サポートするファイルシステムはNTFSである。FATあるいはFAT32の使用は推奨されていない。
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写真1●PostgreSQL 8.0の日本語インストーラ |
Windowsプラットフォーム用のPostgreSQL 8.0は,その他のプラットフォーム用のPostgreSQLとほとんど機能的に変わることのない「フルセット版」である。普段Windowsを使っているプログラマが,自分のPCでDBアプリケーションを開発するなどの用途には特に向いていると言えよう。ただし,開発者もコメントしているように,Windows用のPostgreSQLはLinux版と比べると性能や安定性,実績という点ではこれからという面もある。実務でのサーバ利用を考えているユーザーは,導入前に慎重な検証が必要であろう。