2004年10月,オープンソース・ソフトウエアの普及推進団体 OSDL(Open Source Development Lab)の日本支部,OSDLジャパンの代表であるディレクタに菊地健太郎氏が就任した。OSDLは世界各国の数十の企業や団体が加盟しており,Linus Torvalds氏がフェロー(特別研究員)として在籍している。菊地氏はこれまでOADG(Open Architecture Developers’Group)事務局長としてDOS/Vの標準化や普及活動に取り組んできた。菊地氏に現在のオープンソースの課題や活動方針を聞いた。(聞き手はIT Pro 高橋信頼)

――オープンソース・ソフトウエアが当たり前に使われるようになり,OSDLジャパンが設立された3年前とステージが変化しています。現在のオープンソースを巡る課題をどうとらえていますか。

菊地健太郎氏
 Linuxは日本においてもサーバーの台数シェアで15%程度を占めるまでになりました。しかし,これに満足することなく,さらに普及させるために,課題解決のお手伝いをしていきたいと考えています。

 例えば,Linuxに対するベンダーのサポートは,まだユーザーの要求に追いついていない部分もあります。日本では特に要求レベルが高い。OSDLにはユーザーの意見をLinuxの開発に反映させるための会合「Linux User Advisory Council」があります。インテグレータも交えて,一緒に解決方法を探していく,そういった場を提供しています。

 OSDLが設立された4年前は,(ボランティアの開発者では揃えられない)開発・検証のためのマシンや環境が必要とされており,そういったファシリティを提供する活動を中心に行ってきました。今は,サポートや知的所有権の問題などがオープンソースの課題となってきおり,技術的なサポートも継続しながら,その解決にも取り組んでいきます。そして,さまざまなグループや団体をはじめ,外部との連携が必要なフェーズに入っており,それが,Linuxの今後の成長を加速させるためには,必要不可欠と考えています。

 また日本を世界に売り込んでいきたい。日本の代表的なメーカーが果たしている役割は決して小さなものではありません。例えば通信分野向けのキャリア・グレードLinuxでも,日本のキャリアが必要な機能を仕様にまとめる際に大きな貢献をするなど熱心に取り組んでいます。

 日本のユーザーは世界の中で見ても,組み込みからミッション・クリティカルなシステムまで,非常に先進的な,バラエティに富んだ取り組みをしている。さらに政府も,OSS推進フォーラムなどでオープンソースの普及に取り組んでいる。このような日本におけるLinuxのダイナミックな動きを広く理解してもらいたいと考えています。

――OSDLに移るまで,OADG事務局長としてDOS/Vの標準化と推進に携わってきました。共通点は何でしょう。

 共通しているのは「オープン」であることです。オープンとは,開かれているということ。参加したいという意思のある人がすべて参加でき,積極的に活動できる場が提供されているということです。

 DOS/Vとオープンソースの経緯は似ています。理念は正しいが,さまざまな点で現実はそうなっていないという状況がある。DOS/Vができる前の日本のパソコンは,高価な各社独自のアーキテクチャでした。オープンソースも,まだその本来の広がりを見せてはいません。

 ユーザーの声にそった,正しい活動をしていけば,あるべき姿を実現することができる。それがOADGの活動を通じて得た確信です。