UFJ銀行グループは,日本で最も大規模に,かつ重要なシステムでLinuxを使用している金融機関だ。世界的にも前例のない挑戦であり,UFJ銀行グループのシステム企画,開発を担当するUFJISの技術者たちは,多くの問題や不明点を解決して安定稼働を実現し,コスト削減と性能向上という果実を手にした。三菱東京フィナンシャル・グループとの統合交渉が進められているが,今後もLinuxを採用したインターネット証券システムやインターネット・バンキング・システムの稼働が予定されている。(聞き手はIT Pro編集 高橋信頼)
――UFJ銀行グループは日本の金融機関で最も大規模に,かつ重要なシステムでLinuxを採用しています。
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■15システムは99.99%以上の稼働率,14システムを開発中
2003年9月の本稼働以来,99.99%以上の稼働率を達成しています。計画停止をのぞく,基盤の障害による停止はミドルウエアの不具合に起因した20分間だけです。
また現在14システムを開発中です。2004年下期には,グループ証券会社のインターネット・トレーディング・システムも稼働します。インターネット・バンキングのシステムもLinux基盤を用いて構築中です。パソコンだけではなく,携帯電話からも外貨や投資信託の取引ができるシステムです。
これらの半数はUNIXからの,リソース増強などを目的としたリプレースです。例えば法人向けデリバティブ商品システムの場合は,以前のUNIXサーバーに比べレスポンス・タイムは3分の1に,スループットは5倍になりました。
メインフレームのシステムの再構築もあります。第3次オンライン・システムのリプレースとなる,金利,相場などのシステムも現在開発中です。
――Linuxを採用した理由は。
コストです。採用時の評価では,RISC UNIXに比べ価格が半分のサーバーで2倍以上の性能が得られる。合わせて4倍の価格対性能比です。プロセッサがネックになるような処理では12倍や15倍といったケースもあります。CPUライセンスを利用しているソフトウエアでは,初期コスト・保守料が半分で済みました。また,サーバー市場でのスタンダードとなることによって,機能の拡充,技術者の増加,低コスト化が期待できます。今後構築するシステムはLinuxが原則です。
三浦直樹氏:一つのシステムは3台のアプリケーション・サーバーと,2台のDBサーバーで構成されます。Java APサーバー「WebLogic Server 8.1」を採用。負荷分散装置によりAPサーバーに処理を振り分けています。DBサーバーは「Oracle9i Real Application Cluster(RAC)」によりクラスタリング構成としています。今回のシステムでは,負荷分散装置とOracle RACの機能でサービス無停止を実現しています。
DBサーバーはXeon 2.8GHz~3.0GHz 4プロセッサでメモリー12Gバイト,APサーバーはXeon 2プロセッサでメモリー6Gバイト構成です。OSはいずれもRed Hat Linux Advanced Server 2.1です。
梅田康吉氏:ハードウエアは,米Egeneraのフレード・サーバー「Bladeframe」を採用しました。Bladeframeは,1ラックに最大24台のブレード・サーバーを格納,ブレード・サーバーがネットワークやストレージを共有するアーキテクチャになっており,Bladeframe内部のサーバー(ブレード)故障時には予備サーバーがIPアドレスとディスクを引き継ぐフェール・オーバー機能を持っています。特殊な構造ですが,採用当時,Bladeframeは冗長性や運用コストを鑑みると他社の1Uサーバーよりも安価でした。
蒲原氏:3次オンラインのシステムとなる金利,相場システムは,日立製作所と共同開発しており,日立のIAサーバーを使用しています。
DBサーバーとしてLinux上でのOracle/RACを使用したのは,金融機関の基幹システムとしては世界的にも最も早かったのではないかと思います。約1年半前,導入を検討した際には,米国でLinuxを導入している金融機関を訪ねて話を聞きましたが,WebやAPサーバーまでで,DBサーバーには使っていませんでした。
――基幹システムで使うために,どのような課題がありましたか。
三浦氏:本稼働までには,多くの問題や不明点を解決しなければなりませんでした。