Standard Performance Evaluation Corp.(SPEC)の発表によると,MySQL 4.0を使用したシステムがSPECjAppServer2002でコストパフォーマンスの記録を更新した(公表されたベンチマーク結果)。

Java APサーバーのベンチマークSPECjAppServer2002

 SPECjAppServer2002は,Javaアプリケーション・サーバーを比較するためのベンチマーク規格だ。このベンチマークを利用すれば,最適な性能とコストを達成するハードウエア/ソフトウエア構成をテストし比較することができる。

 SPECjAppServer2002は,サプライチェーン・システムを想定した仮想システムで,性能とコストパフォーマンスを計測するものだ。表1のような4つのビジネス機能をシミュレートしている。

表1●SPECjAppServer2002がシミュレートしている機能

機能 内容
Customer(顧客) 顧客からの注文と問い合わせを受け取る
Manufacturing(生産) 顧客からの注文に応じて生産を行う
Supplier/Service Provider
(サプライヤ/サービス・プロバイダ)
外部サプライヤとの処理を行う
Corporate(企業) 顧客,部品,およびサプライヤの情報をすべて記録する

 SPECjAppServer2002では,2つのベンチマーク結果がもたらされる。

 TOPS(1秒あたりの合計オペレーション数)は,注文トランザクション数と生産作業命令数の和を計測時間(秒数)で割ったもの。評価対象のシステムの総合的なポテンシャルを表す。$/TOPSは,テストに使用したシステム(ハードウエア,ソフトウエア,およびサポートを含む)の価格をTOPSで割ったもの。評価対象のシステムのコストパフォーマンス(価格性能比)を表す。小さいほど,コストパフォーマンスに優れている。

MySQL 4.0.15は4CPUマシン上で稼働

図1●システム構成
 今回コストパフォーマンスの記録を更新したケースは,2台のアプリケーションサーバー(Sun Fire V20zにBEA WebLogic Application Server 8.1 SP2を搭載)と1台のデータベースサーバー(Sun Fire V40zにMySQL Standard 4.0.15を搭載)にて試験を行っている(図1[拡大表示])。

 今回のテストでは,3台構成で1,363.88 TOPSをマークし,82.74 US$/TOPSを達成した。

表2●データベース・サーバーのスペック

ハードウエア Sun Fire V40z
OS Solaris 9 HW 9/04 Operating System, x86 Platform Edition
Processor AMD Opteron 850 2400MHz 4CPU
メモリ 8192MB
ハードディスク 73Gb(10,000RPM) Ultra-320 SCSI x2個
外付ディスク
(5 x 73GB 10K RPM Ultra160 SCSI)
Sun StorEdge 3310 SCSI Array

 MySQL 4.0.15は4CPUマシンで動作している。我々が使用しているMySQLと同じパッケージである。

 Resultには,他にも現時点で26ケースが公開されている。4倍以上の性能となる5991.73 TOPSをマークした構成も掲載されている。しかし,9台のアプリケーション・サーバーと1台のデータベース・サーバーという大規模な構成だ。当然,トータルコストが膨らむので,価格性能比では654.20 EUR/TOPS(798.12 US$/TOPS)と低くなっている。

いよいよ秒読み段階となったMySQL 4.1

 8月末にMySQL 4.1.4-gammaがリリースされた。gammaとは,正式リリースの直前のバージョンであることを表す。

 MySQL 4.1は,待望の副問合せ(サブクエリー)が利用できるようになる。これまで,テンポラリテーブルなどを使用して代用するしかなかったが,その制限から開放される。

 また,キャラクタ・セットをデータベース,テーブル,フィールド単位で設定できるようになる。正式リリースの段階で,再度に本コラムで詳しく紹介したい。

MySQLのバージョン番号の意味

 何気なく見ているバージョン番号には,次のような意味を持っている。これを覚えておくと,バージョン番号で各リリースの位置付けが理解できる。また,今後,どのように推移するか,ある程度予測できる。

表3●MySQLのバージョン番号の意味(例 MySQL 4.1.4-gamma)

位置 意味
4 1桁目 メジャー・バージョンを表す
1 2桁目 リリースレベルを表す。1桁目とセットで使用
4 3桁目 リリース・シリーズ内のバージョン番号。この数字が大きいほど,同じリリース・シリーズでバグ・フィックスや改良が進んでいる
gamma リリース リリースの状態を表す

 リリースは,開発段階のクォリティを表す。表4のように4つの段階が存在する。

表4●リリースの意味

意味
alpha テストが完了していない新しいコードが含まれている
beta 全ての新しいコードがテスト済み。予定している機能をすべて実現している。alphaとして少なくても1カ月以上バグが報告されていない状態からbetaに移行する
gamma ほぼ問題の無いベータ版。商用でないソフトウエアでは,stableの位置付け
無印 GA(Generally Available),製品版として安定したバージョン

 今回リリースされた,MySQL 4.1.4-gammaは,製品に準ずるクォリティであることが分かる。

 GA(Generally Available)は,製品版として安定したバージョンを指す。現在,MySQL 4.0.20が,GAの位置付けだ。以前は,productionと呼ばれていた。

佐藤栄一(Satoh Eiichi)

■著者紹介 佐藤栄一(さとうえいいち)
ゼンド・ジャパン株式会社 アーキテクト MySQL担当。PHPのコア技術者が設立したイスラエルZend Technologiesと提携関係にあり,Zend製品の販売,サポートおよびLAMPおよびLAPPによるシステム構築を推進しているMySQL ABのリセーラとしてライセンス,サポート,コンサルティングの提供を行っている。