ノベルが6月から日本でSUSE Linuxを発売した。世界的にRed Hatに次ぐ規模を持つディストリビューションの参入は,日本のLinuxユーザーの選択肢を大きく変える可能性がある(関連記事「SUSE上陸でどう変わる,ディストリビューションの選択肢」)。米Novell Chief Technology Officer of SUSE LINUX Business UnitのJuergen Geck氏が都内で会見し,「SUSEの技術的な優位性はビルドの自動化技術による品質」であるなどと語った。また「ドイツのミュンヘン市役所にLinuxを導入する計画は順調に進んでいる。この数週間以内にもGOの最終決定が出るだろう」との見方を示した。(聞き手はIT Pro編集,高橋 信頼)。

――SUSEの技術的な面での優位性はどこにあると考えているか。

Juergen Geck氏
 ディストリビューション・ビルドの自動化技術だ。我々は4000にのぼるソフトウエア・パッケージを12時間以内に再コンパイルして,再パッケージ化することができる技術を持っている。この自動化により,新機能をいち早く取り入れ,不具合を即座に修正し,品質の高い製品を素早く展開できる。我々は,ひとつのソースコードで様々なCPUのすべてのプラットフォームに対応できている。

――2004年末出荷予定の,NetWareとの統合OS「Open Enterprise Server」とはどのようなものか。

 Open Enterprise Serverは,Linuxのコア,NetWareのコア,そしてそれぞれのサービスで構成される。NetWareを選ぶのか,Linuxを選ぶのか,ユーザーが選択できる。全く同じサービスを,NetWareでもLinuxでも走らせることができる。

――デスクトップのSUSE Desktop Professionalには,Linux上でWindowsAPIをエミュレートするツール「CrossOver Office」がバンドルされており,Windows向けのアプリケーション・バイナリをそのまま動作させることができるとしている(関連記事)。しかし,ベースとなっているオープンソース・ソフトウエアのWINE自体はかなり昔から開発が続けられているが,いまだWindowsとの100%の互換性は得られていない。技術的な困難さはどこにあるのか。また,日本語環境はサポートされるのか。

 互換性の向上は,まだまだ改善していかなければならない状況にある。しかしWINEは,プロジェクトの内外で様々な努力が展開されている。WINEの将来的な展望は明るいと見ている。

 技術的な部分での困難さは原則的にない。難しさは,米Microsoftがドライバーズ・シートに座っており,我々がそれにキャッチアップしなければならないという部分にある。

 日本語対応についての質問をいただいて嬉しく思う。我々は日本語化対応については,重要な焦点として活動してきた。各国対応は重要な問題であり,すでにクリアできている。

――Novellが買収したオープンソース開発企業米Ximian(関連記事)がデスクトップ環境「Ximian Desktop」を開発しているが,今後SUSEの標準デスクトップ環境となる可能性は。

 可能性は十分あり得る。具体的にどういう新しい製品がいつまでに出ると申し上げることはできないが,SUSEとXimianの開発チームは連携しており,サーバーでも,デスクトップの次のバージョン9.2のプロジェクトにもXimianのチームが関わっており,そういう連携の中でプロダクトにまとめていく。

――ドイツのミュンヘン市役所にデスクトップLinuxを導入する計画が進んでいると聞いている。現在の状況は。

 ドイツのミュンヘン市役所のデスクトップ機1万4000台のデスクトップ機をSUSE Linuxに移行する計画だが,我々は,昨年からこの一大プロジェクトを推進してきた。1年間は評価(evaluation)の期間として進めてきたが,ここまではプランどおりで,すべて順調に進んでいる。この数週間以内にもGOの最終決定が出るだろう。

――SUSE,米SCO Group,ブラジルConectiva,ターボリナックス4社の統一Linuxである「United Linux」(関連記事)の開発が止まっている。新版が登場する予定はあるのか。

 4社の存在があって初めてUnited Linuxの存在が可能になる。そう申し上げれば答えは明白だと思う。

――SCOがLinuxに対する知的財産権を主張して訴訟を起こしたことがUnited Linux停止の原因なら,SCO抜きのNew United Linuxといったものが結成される可能性はあるか。

 Linuxは非常に高い成長を遂げてきた。再び市場で統一Linuxに対する必要性の機運が高まってくれば,注目したいと思う。

――Linuxディストリビューション事業というのは利益を出しにくいという印象がある。SUSEの事業は利益が出ているのか。

 利益を出している。オープンソースによるビジネス・モデルは新しいものだが,難しいものだと考えてはいない。具体的には,我々の知財および,インテグレーションに対するきちんとした費用のチャージングを展開していきたい。