2月10日,Red Hat Linuxの実質的な後継であるFedora Coreの日本でのコミュニティ「Fedora JP Project」が発足した(関連記事)。Fedora Coreの課題は何か。日本の企業ユーザーにとって選択肢になりうるのか。Fedora JP Projectのリーダー重松直樹氏に聞いた。(聞き手はIT Pro編集 高橋 信頼)

――Fedora JP Project設立の経緯は。

重松直樹氏
 母体となったのは旧Red Hat Linux メーリングリスト(http://www.linuxml.net/)です。このメーリングリストは,99年ごろにできたものです。最初は私ひとりで運営していましたが,そのうちにRed Hat Linuxが爆発的に普及して,3000人くらいが参加するようになりました。ひとりでは運営しきれなくなり,スタッフとなってくださる方を募って,多いときで7人くらいでLinuxメールマガジンの発行などを行っていました。

 そういうわけで開発コミュニティではなかったため,Fedora Projectがスタートした時も,誰かが日本での開発をやるだろうと思っていたんですが,始まらない。そのうち日本のレッドハットの方と話す機会があって「誰かに日本でのコミュニティを作ってほしい」と言われて。昨年11月ごろ,旧Red Hat Linuxメーリングリストで声をかけたところ最終的に15人くらいが集まりました。

 現在ではユーザー・メーリングリストに登録している人が4300くらい,開発メーリングリストが200弱。スタッフ・メーリングリストは150人弱で,30人くらいの方が活発に活動しています。

 JP Projectの正式発足までは,アンオフィシャル・サイトとして活動していたのですが,日本のレッドハットの方から,あえてアンオフィシャルという冠をつける必要はないだろうと言われ,Fedora JP Projectとしました。ただ名称に関しては商標などの関係もあるので,米国のRed Hatや日本のレッドハットとも連携をとりながら,慎重に進めている段階です。

――活動の内容は。

 11月から2月までは主にソフトウエアのメッセージやドキュメントの翻訳を行ってきました。ドキュメントはもうPDFファイルで50ページくらいになっています。

 そろそろ日本語のBugzilla(バグ情報データベース)を作ろうと思っています。一般ユーザーが英語のBugzillaに投稿するのは敷居が高いので,まず日本のBugzillaに報告してもらって,日本で解決できるものは直して,解決できない問題はFedora Projectに報告していく形にしようと考えています。

 また日本独自のリポジトリ(パッケージ情報)も作成する予定です。アプリケーション・パッケージの中には,Fedoraの日本語ロケール(環境)であるUTF-8に完全に対応できていないものもあるので,そういったパッケージの情報は初期設定を正しく動くように変えたリポジトリ・データを,置き換えのような形で提供することを考えています。

――米国のFedora Projectとはどう連携していきますか。

  米国のFedora Projectには積極的に協力,参加していきます。Fedora Projectの前身となったFedora Linux Projectのリーダー Warren Togami氏とコンタクトしており,一緒にやろうという話になっていて,すでに米国にJAメーリングリストが作られています。日本の開発用メーリングリストは,本家のJAメーリングリストと統合しようと思っています。

 Togami氏は,もともとはハワイ大学の学生だったのですが,現在はRed Hatに入社したようです。日系の方らしく,ハワイ大学で日本語を勉強されていて,彼からのメールは一部が日本語で書いてあったりします。

 Togami氏からは,Fedora Linux Project内にJA Projectを作って,そこで活動しないかという話もあったのですが,活動としてはFedora JP Projectで行うという形に落ち着きました。とはいえTogami氏も日本語環境の開発に興味を持たれているので,連携して動きたいと思っています。

 3月には,米国のRed Hatからコミュニティ担当の方が来日されるので,その際にどういった活動ができるか,具体的な意見交換を行う予定です。

――Fedora Coreはアップデート提供期間が短いため,ビジネス用途に向かないと言われます。

 今までRed Hat Linuxのアップデート提供期間は1年でしたが,Fedoraではそれがおそらく伸びると思います。今のところ,2年くらいは使えるという感触を持っています。「Fedora Legacy」というプロジェクトが立ちあがっており,それによると“1-2-3 and out”というポリシーでアップデートを提供するとしています。3代前まで,つまりFedora Core 4が出た時点でFedora Core 1のサポートを打ち切ると言っています。最低でも1.5年は使えるでしょう。

 Red Hat Linux 7.x,8もFedora Legacyによるアップデート提供対象になっており,すでにアップデートが提供されています。サポートが切れているにもかかわらず使い続けているユーザーがほとんど,というのが現状ですから。Red Hat Linux 9に関しては,今年の4月31日でRed Hatによるサポートが切れますが,その後はFedora Legacyがアップデートを提供する予定です。

――Red Hat LinuxではEUCだった日本語ロケールが,FedoraではUTF-8に変わりました。そのためUTF-8に対応していないアプリケーションで文字化けが起きる,といった問題があります。

 日本語ロケールの問題は,Fedora JP Projectとして優先して取り組む方針で,これから開発に取りかかります。

 UTF-8化はいつかは通らなければならない道だと思っています。UTF-8にすることで,国際化の手間を減らすことができます。日本の技術者は今まで日本語化のために時間をとられ,新しいものを作ることに時間を割けなかった。

 UTF-8化により日本語化の手間が減れば,もっともっと日本から独自のオープンソース・ソフトウエアが出ていけるようになるはずです。








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