ルクセンブルクのSkype Technologiesが3月10日に始めた新サービスがある。名前は「SkypeIn」。同社のインターネット電話サービス「Skype」で,一般電話からの着信を可能にするものだ。まだベータ版であることや正式な発表がなかったためか,メディアでもあまり多く取り上げられていないが,実はこれ,ユーザーの間で待ち望まれていたサービスである。
Skype社は昨年7月,一般の固定電話や携帯電話に発信できる「SkypeOut」を開始,パソコン間だけで利用するソフトフォンからの脱却第1弾となった。今回はこれに次ぐ第2弾。これによって,Skypeは既存通信事業者の脅威になると言われている。今回はこの新サービスについてレポートする。
料金は1年で30ユーロと“激安”
SkypeInは,3月10日に配布を始めた「Skype 1.20 Beta」(Windows版)で利用できるようになった。またこれに続き,2週間足らずの間にMacintosh版(1.0.0.15 Beta)とLinux版(1.0.0.20)もリリースした。いずれもSkypeInと留守番電話機能の「Voicemail」を提供。多くのユーザーが利用できるようにした(各ソフトはSkype社のWebサイトでダウロードできる)。
SkypeInを利用するには,まずユーザー自身のSkypeアカウントに電話番号を割り当ててもらう必要がある。電話番号はSkype社のサイトで買うという形式。これはサブスクリプション・サービスで,実際には料金を支払っているあいだ電話番号を借り受けるという形。料金は,3カ月間10ユーロ(約1380円)または,1年間30ユーロ(約4140円)のいずれかを選べる。電話の基本料金と考えれば非常に安い金額である。なお同じ番号を使い続けたければ,サブスクリプション期間ごとに更新すればよいという。
写真1●電話がかかってくるとベル音で知らせる(画像クリックで拡大表示) このときSkypeが最前面でない場合,ポップアップ・ウインドウが現れる(相手が一般電話であることを知らせる“電話アイコン”を表示する) |
ほかの地域でも同様のことが言える。例えば米国の番号では,まず,エリアコード(市外局番)を選んでから,自分の好きな番号を(候補リストの中から)選択して買うようになっている。自分の住んでいる地域のエリアコードを選んでおかないと,地元の知り合いに長距離料金がかかってしまうからだ。
逆に,遠方に顧客を持つ商売をしている場合は,その地域のエリアコードを取得するのがよい。顧客は常に市内料金で済む(米国の場合は固定電話からは無料になる)。もちろん遠方から自分のパソコンまではインターネット経由。いくら遠くても費用はかからない。なお,SkypeInでは,1つのアカウントにつき最大3つの電話番号を割り当てることができる(料金は3つ分かかるが)。これを利用して仕事に役立てることも可能だろう(注1)。
注1:Skype社では,自分が住んでいない国の電話番号の場合,取得できない可能性があることを示唆している。PSTN(公衆交換電話網)に関する規制で,居住者以外への加入電話回線番号の付与を禁じている国があるからだ(Skype社の資料)
日本では「050」のIP電話用番号,だが規制の壁が
今のところSkypeInで購入できるのは,米国では「415」や「805」といった3けたのエリアコードで始まる番号。フランスは「0870」,英国は「020」,香港は「819」ではじまる電話番号のみとなる。英国番号は一時供給する番号が不足し“売り切れ”になったとのことだが,現在は再開されているようだ。
日本でのサービスは未定だが,日本で始まるとすれば「050」ではじまる11けたのIP電話用番号を使うことになると思う。ただし,050のSkypeサービスへの割り当てをめぐっては,規制という壁が立ちはだかっており,迅速に進んでいないようだ(関連記事)。