「ベスト・ブランド」のソニーが展開する海外戦略昨年11月,ソニーとドイツのBertelsmannが音楽事業を統合し,新たなレコード会社「Sony BMG」を作ると発表した(関連記事)。この7月20日,欧州委員会はそれを無条件で承認した(ECの発表資料)。米国の連邦取引委員会(FTC)も近日中に承認すると言われており,まもなく世界市場で首位を争う巨大レコード会社が誕生することになる(米New York Timesの記事)。 ソニーはここ最近,世界のトップ企業とこうした事業統合/提携を積極的に進めており,米メディアでもずいぶんと話題になっている。先ごろ米Harris Interactiveが発表した「米国の消費者が思い浮かべるベスト・ブランド」の調査でも5年連続で1位を獲得。米Coca-Cola,米Dell,米Ford Motorといった米国を代表する企業を追いやり,圧倒的な知名度を誇っている(表1,関連記事)。そこで,今回はここ最近におけるソニーの海外戦略についてまとめてみたい。
■エンターテインメント事業で世界展開 まず,今回のBertelsmann社との事業統合以外でソニーのエンターテインメント関連事業を見てみると,次のようなものがある。今年5月に米国でオンライン音楽配信サービスを開始した(関連記事)。6月には英国,ドイツ,フランスでも音楽配信サービスを開始。また米McDonald'sとは音楽配信の無料サービスで提携した(関連記事)。Big Macのセット商品などを購入すると,1曲無料でダウンロードできるというものである。これは大変好調だったようで,McDonald's社の4〜6月期売上高は1987年以来最高の伸びを示した(McDonald's社の発表資料)。 米Apple Computerに先行を許してしまったハードディスク搭載型携帯音楽プレーヤでは,「Walkman」ブランドの製品「NW-HD1」を米国と欧州市場で投入すると発表した。米国での出荷は8月,欧州では年内に出荷する予定という(米TheStandard.comに掲載の記事)。 ■映画会社を買収して「Blu-ray Disc」を後押し ソニーは米大手映画会社MGM(Metro-Goldwyn-Mayer)の買収交渉も進めており,話題になっている。このMGM社は「007」「Rocky」「Pink Panther」など映画4000本を保有する会社。この買収が成立すればソニーは,Sony Pictures Entertainmentと合わせて約8000本の映画資産を持つことになる。またこのことは,同社や松下電器産業などが提案する,DVDの次世代を狙う光ディスク規格「Blu-ray Disc」 を有利にするとも言われている。米国の大手映画会社を手に入れ,そのソフトと機器を連携させることで,NECや東芝が提案する「HD DVD」に対抗するという。 ただし,MGM社の買収には,米Time Warnerも名乗りを挙げたと伝えられており,現在,話し合いは混とんとしているもようだ。英Reutersの報道によると7月15日,代表執行役会長兼グループCEOの出井伸之氏は同社のインタビューに答えて,「複雑な問題がいくつかあり、あとはMGMの経営陣次第」とコメントしている。Time Warner社がソニーと同額の50億ドルを提示しており,現在は買い手を選べるMGM社に主導権が移っているとしている(Reuters.comに掲載の記事)。 ■Samsungと液晶パネル生産で提携 実はこのときの出井氏のインタビューは韓国で行われた。この日,出井氏がいたのは韓国タンジョン。韓国S-LCDの創立記念式典に出席していたからだ。このS-LCD社とは,ソニーと韓国Samsung Electronicsの液晶パネル製造合弁会社である。ソニーは製造分野でも海外大手と連携を進めているのだ。 このS-LCD社は,ソニーとSamsung社の大型テレビ向けアモルファスTFT液晶パネルの製造・供給拠点として,2005年上半期から月産6万枚の生産能力で稼働する予定である。ソニーは,大型液晶パネル製造大手のSamsung社と組むことで世界の液晶産業をリードしていきたいとしている。 この背景には,液晶テレビ分野でのシャープという強力なライバルの存在がある。ディスプレイ製品の調査会社である米DisplaySearchが先ごろ発表した,2004年第1四半期の世界における液晶テレビ調査によると,出荷台数のトップはシャープで,そのシェアは26.5%。これにソニーとSamsung社がそれぞれ11.9%で並んでいるという格好である。またシャープはすで第6世代工場(亀山工場)を稼働,生産を拡大していることから第2四半期の調査結果ではシャープのシェアがさらに伸びると予測している(DisplaySearch社の発表資料)。 ■IBMとはゲーム分野で提携 開発分野では米IBMとの提携が記憶に新しい。これはソニー・グループがIBM社に3億2500万ドル投資してIBM社が新たなマイクロプロセサ「Cell」(開発コード名)の生産体制を構築するというもの(関連記事)。 ソニーはこれを次世代コンピュータ・エンターテインメント・システムや次世代デジタル民生電子機器に採用するとしているが,米メディアをみると,これには次期PlayStationである「PlayStation 3」が含まれるようである。ソニーは来年5月に開催されるゲーム関連の展示会「E3」でCellプロセサ搭載のPlayStationを披露し,そのほぼ1年後に製品を出荷すると見られている。しかし,来年のE3では,任天堂が「Revolution」と呼ぶ新製品を,米Microsoftも次世代機「Xbox Next」を披露する計画を立てており,この業界,今後も激しい開発・市場競争が繰り広げられるようだ(米CNET News.comに掲載の記事)。 ■Sony Ericssonの世界シェアは5位 ソニーが海外展開する提携事業には,携帯電話機のSony Ericssonもある。7月15日に発表した同社2004年4〜6月期の決算では,販売台数が前年同期比55%増,売り上げは同34%増で,好調に推移していることが分かる(発表資料)。しかし世界全体に目を向けてみると,同社のシェアはまだ5.6%。今年第1四半期におけるその出荷台数は848万8600台で,首位であるフィンランドNokiaの4423万7500台には遠く及ばない(関連記事)。
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ソニーは,先ごろ発表した2004年度の経営方針で,「エレクトロニクスの融合戦略」「エンターテインメント事業の強化」といった施策を挙げた。2002年度の決算では,いわゆる「ソニー・ショック」を引き起こし,翌2003年度の決算では,エレクトロニクス分野での減収・赤字転落に加え,ゲーム,音楽,映画分野でも減収となった。こうしたことへの対策か,ソニーは今、急ピッチで海外戦略を進めている。果たしてこれら施策は実を結ぶのか。掲げる「営業利益率10%」を達成し,名実ともに「ベスト・ブランド」になる日を期待しつつ,今後も注目していきたい。
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