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米国で導入が進まない「コピー・コントロールCD」

2003/09/12

 米国ではここのところ音楽業界に関する話題が多い。例えば米国時間9月8日には,米レコード協会(RIAA:The Recording Industry Association of America)がネットで音楽ファイルの無料交換を行っていたとする261人の個人ユーザーを提訴した(発表資料)。その前週には,米Universal Musicが音楽CDの出荷価格を値下げすると発表したばかり(関連記事)。

 ところが,意外にも米国からはあまり聞こえてこない話がある。日本や欧州で今,急速に導入されている「コピー・コントロールCD」(CCCD)である。PtoPによる違法ファイル交換を撲滅したいという目的は日本や欧米で同じはず。しかしその解決法は米国の場合,CCCDではないようだ。今回は米メディアの情報を見ながらこのあたりの米国事情について考えてみたい。

■CCCDは「COMPACT DISC」にあらず

 まずはCCCDについて簡単に説明しよう。CCCDとは,オーディオ・トラックにあえてエラー信号を混ぜることでパソコンで読み取れないようにした音楽CDである(関連記事)。CD小売店やコンビニエンス・ストアなどでCDと同列に普通に販売されている。一般の音楽CDプレーヤで再生する際は,プレーヤに備わるエラー修正機能を使って再生するので,これまでのCD同様に音楽が楽しめるとされている。

 パソコンの場合はこのオーディオ・トラックの再生はできないが,その代わり,CCCDに入っている専用のプレーヤ・ソフトで,エクストラ・トラックに収録してある圧縮音源を再生する。しかし,このエクストラ・トラックとソフトがWindowsにしか対応していないことからMacintosh,UNIX,Linuxでは再生できない。

 CCCDは日本では2002年3月にエイベックスが初めて発売し,その後,東芝EMI,ワーナーミュージック,ポニーキャニオン、ビクターエンタテインメントなどと続いた。また今年に入って,ソニー・ミュージックエンタテインメント,ユニバーサル ミュージックなども導入している。

 これらのすべてが,イスラエルMidbar Tech(米Macrovisionが2002年11月に買収)が開発した「Cactus Data Shield」(CDS)方式を使っており,これにより,トラック数や演奏時間などを管理するデータ領域,エラー訂正符号などを変更している。こうしてデータの変更を行っていることが,音楽CDの規格「CD-DA(COMPACT DISC DIGITAL AUDIO)」(オランダPhilipsとソニーが1981年に提唱した「レッド・ブック」と呼ばれる規格で規定)から外れているため,COMPACT DISCのロゴは付いていない。そしてCCCDを再生できない機器が存在するのである。

■レコード会社も機器メーカーも保証しない

 CCCDのパッケージに記載されている「再生に不具合が生じる場合がある機器」には,ポータブルCDプレーヤ,カーナビ一体型のカーステレオ,CD・LDコンバーチブル・プレーヤ,ゲーム機などがある。実は,これはレコード会社側の免責事項として書かれているもの。つまり,これらの機器で再生できない場合でも返品はしない,というメッセージなのである。

 また,機器メーカーでもこのCCCDの再生を保証していない。プレーヤはエラー訂正符号を使ってエラーを補完して再生しようとする。しかしエラーは人為的に入れられたもので,その量はこれまでの音楽CDの比ではない。プレーヤにはエラー修正に多大な負荷がかかることからその寿命が縮まったり,故障につながるとも言われている。そして,機器メーカーは顧客がこうした事態に直面しても保証しない。「CCCDは規格外であり,その使用はあくまでも個人の責任において」というのがスタンスなのだ。

 以上がCCCDと,CCCDを巡る問題点の概略なのだが,実はまさにこのことが,米国でCCCDが出回っていない理由なのである。

■今のCCCDでは米国の消費者を説得できない
 
 米メディアに,「世界最大の音楽市場である米国の(CCCD対する)沈黙ぶりは,ますます顕著になっている」という記事が出ている(掲載記事)。日本や欧州では,CCCDが大量に販売されている昨今,米国ではまったくといってよいほど売られていないという意味だ。試しに,筆者がAmazon.co.jpの「ポピュラー音楽」のカテゴリで「CCCD」で検索してみたら,1460件の商品がヒットした。これをAmazon.comで,米国で相当する言葉「copy protected」で検索してみたら,わずか4件だった。

 同記事によると,Universalが,2001年の夏までに同社タイトルの相当数をCCCD化すると公言していたという。しかし,2002年の9月時点で同社がリリースしたのはわずか3タイトル。そして,Universalは,そのことの説明や今後の計画・方針など明確なことは明らかにせず,ただ「CCCDの技術についてまだ調査中」とだけ述べていたという。

 しかしその答えは,BMGなどの他のレコード会社からの話で分かる。それは,「レコード会社が,消費者の反応に用心深くなっている」ということ。CCCDについては,当初からパソコンやDVDプレーヤ,ソニーのプレイステーションで再生できないという事例について報道されたり,Apple社のパソコンにダメージを与えることなどが伝えられた。そもそもCCCDは,消費者の私的複製権の問題も解決していない。こうしたことに対し,米国の消費者が拒否反応を起こしたのだ。

 それを物語るのがBMG Entertainment新技術部門副社長Christa Haussler氏の同記事中のコメント。「米国では(CCCDは)とても大きな,政治的,法律的問題」(同氏)。確かに米国には,「CCCDであることを表示せずに販売した」として,消費者がレコード会社を訴えた事例がある。

 また,RIAAのプレジデントであるCary Sherman氏も,「この国のレコード会社は消費者の動向にとてもセンシティブ。CCCDの技術の進歩をとても慎重に見守っている。この技術はもっと消費者に好意的である必要がある」(同氏)と言っている。

 「本来は,早急に導入したいところだが,CCCDで現在使われている技術はまだ発展途上で米国の消費者に納得してもらえるものではない。だから躊躇(ちゅうちょ)している」というのが本音のようだ。米国では,それほどまでに消費者の意見が色濃く反映されるのか,と考えさせられる記事である。

■「訴訟」「値下げ」「デジタル配信」

 冒頭の話に戻るが,Universalが導入する新たな出荷価格は9ドル9セント。これにより消費者を取り戻したい考えだ。これまで小売店で17〜18ドル(2000円前後)で売られていたCDアルバムは,今後13ドル(約1500円)になり,ゆくゆくはなんと10ドル(約1200円)程度にまで引き下げられる可能性があるという。

 米Apple Computerのデジタル音楽販売サービス「iTunes Music Store」が盛況のようだ。Apple社は,iTunes Music Storeの楽曲販売数が1000万曲を突破したと発表している(関連記事)。サービス開始以来,月平均250万曲ペースで順調に伸びているというわけだ。このApple社のサービスでは,Universalをはじめ,BMG,EMI Records,Sony Music,Warnerといった5大レーベルの楽曲が提供されている。これらはすべてRIAAのメンバーである。RIAAはこうしたデジタル音楽の普及促進にも努めているのだ。

 現段階でCCCDという特効薬が使えない米国では,訴訟とCDの値下げ,そしてデジタル配信の促進で,違法ファイル交換の撲滅と,販売不振からの脱却を図ろうとしているというわけだ。さて,読者の皆さんは,米国と日欧のどちらの方法が好ましいとお考えになるだろうか。

 最後に前述の記事に登場するBMG Entertainment新技術部門副社長のもう1つのコメントを紹介して終わりたい。

 「欧州ではパソコンの普及率が上昇しているものの,米国に比べればまだパソコンで音楽CDを聴く人は少ない。消費者の反発が比較的少なかったため,各レコード会社がCCCDを導入しやすかった」(同氏)。これは日本についても言えることなのだろう。日欧の消費者はずいぶん軽く見られているのだなあとつくづく思うコメントである。

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