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米国で大人気の「blog」,何が人々を魅了しているのか

2003/04/11

 イラク戦争を機に,日本の大新聞でも「ブログ」が取り上げられるようになった。英語では「blog」と書くのだが,今,米国では情報流通の手段として,このblogがもてはやされている。

 blogとは「Web log」を短くした造語。個人やグループなどが,日々の出来事や意見,情報などを書いてWebに掲載したものをこう呼んでいる。米国ではすでにblogという単語は定着しているようで,blogを書くことを「blogging」,やっている人を「blogger」と呼んでいる。

 blogには,特に利用法についての定義はないのだが,Journal(日誌あるいは日記)をWebで公開したものを指すことが多いことから,日本語では「Web日記」や「“公開”日誌」などと訳して紹介されている。

 日本には以前から日記サイトの文化があり,blogはそれに似ているところもある。しかし,「diary」とは呼ばれず,前記のようにJournalと呼ばれている。従来からの日本の日記サイトでは,1日1件の記事で,新しいものを下に書き加えていくというスタイルが多い。これに対して,blogでは,1日に複数本の記事が書き加えられることも普通で,新しいものが常に上に来る。自分のblog内に,他人のblogの記事内容を表示したり,またblogサイト同士で自由にリンクを張っていることなども特徴となっている。

 サイトの管理者が手作業でblogを更新するのは,なかなか手間がかかる。記事を書くだけでなく,サイト内のリンクの更新といった作業を伴うからだ。そこで彼らは,blogサイト構築・運用の専用ツールを使っている。逆に言えば,そうしたツールやそれを支える技術が登場したことでblogがここまで普及したと言える。

 今回は簡単ではあるが,これらのツール/技術,それを手掛けた人物などに焦点を当てて,blogについて考えてみたい。

■最初にblogを始めた人物

 1カ月ほど前の米メディアに,カリフォルニアのソフト会社の元CEOが米Harvard大学のLaw Schoolに特別研究員として招かれ,blogを指導するという記事が載っていた(掲載記事)。この人こそが,世界で最も長い歴史を持つblogを運営しているDave Winer氏である。

 米UserLand Softwareの元CEOであるWiner氏は,Webコンテンツ編集・管理のスクリプティング・ツール「UserLand Frontier」の開発者だが,当初このツールにblogの機能を組み込むことから始めた。そもそもは,米国通信品位法の反対運動の一環としてインターネットにおける言論の自由を訴えるプロジェクト「24 Hours in Democracy」を立ち上げ,その際に,各種の情報を1枚のWebページに逆時系列順に並べるというアイディアを思いついたという。

 その1年後の1997年4月,同氏は「Scripting News」と呼ぶスクリプティング技術関連のblogを始めたのだが,当時はまだblogという言葉は存在しなかったという。その後,Jorn Bargerという人物がblogと呼び始め,それが定着していった。一方,Winer氏のUserLand Software社は,UserLand Frontierをベースにしたblogツール「Radio UserLand」を開発することになる。

■Winer氏がWeb界に果たした功績

 Winer氏は,SOAP, XML-RPC,RSSや,OPMLといったプロトコルの開発に寄与した人物でもある。中でもRSSの発展に関する経緯についての話は,同氏のWeb界における役割の大きさが分かって興味深い。

 RSS (RDF Site Summary)とはWebサイトの要約(サイト・サマリー)をメタ・データとしてXMLで記述する仕組みである。例えば,W3CSlashdotなどのWebサイトではサイトの更新情報を公開している。多くのblogサイトでは,こうした更新情報を受信し,自分のサイトの一部分に掲載記事の見出しとリンクの一覧を表示している。W3CやSlashdotなどのサイトに新しい記事が入ると,それに連動して一覧も自動更新される。つまり,これを利用することで,業界の最新動向を常に自分のサイトの読者に提供できるようになる。これを実現しているのがRSSというわけだ。なお,こうした更新情報のことを「RSSフィード」と呼んでいる。

 この仕組みは当初,米Netscape Communicationsが自社のポータル「My Netscape」にニュースのヘッドラインを配信するものとして開発した。もとは見出しの一覧だけを配信するものだったが,Winer氏のScriptingNews仕様から10以上の要素型を取り入れ,見出しだけでなく要約,格付け,著作権,更新日付などさまざまな情報を合わせて提供できるようになった(注1)

 一般的にblogサイトは非常に頻繁に更新されている。この更新頻度が高いことがblogの定義の1つだと言われるほどである。こうしたblogの特徴と,RSSフィードの利点がうまく合致していたこと,またWiner氏がRSSを自分の製品にも組み込んだことなどで,blogにおけるRSSの利用が急速に進んだと言われているのだ。

注1:RSSについては「The Web KANZAKI」で詳しく解説されている。

■Trotto夫妻が考えた「TrackBack」

 Winer氏のほかにも,blogの普及に大きく貢献した人物がいる。Benjamin(Ben)Trott氏とMena Trott氏である。両氏のファミリー・ネームが同じなのは2人が夫婦だからだ。2人はお互いの誕生日が6日しか離れていないということから名付けた「Six Apart」という会社で,「Movable Type」というblogツールの開発に当たっている。

 そしてBenとMenaが考案し,このMovable Typeに実装したのが「TrackBack」という機能。これがblog界に革命を起こしたと言われている。

 TrackBackとは,世の中に無数にあるblog同士をつなぐ機能である。例えばあなたがどこかのサイトで記事を読んで,それに対する自分の考えを書きたいとする。その際,サイトに用意されているコメント機能を使ってコメントを投稿するというのがよくある方法だ。しかしこれだとあなたのコメントはあくまでも他人のサイトに投稿されただけで,あなたの手元に残らない。

 TrackBackはこれとは大きく異なる。コメントは自分のサイトで書けばよいのだ。そして,元の記事を掲載しているサーバーに対して,そのページのURLを,タイトル,本文の一部,サイト名称などの情報とともに投稿する(注2)。このことを「TrackBack Pingを送信する」と言うが,そうすることで,元記事のところには,あなたのコメントのURL,タイトルといった一部の情報だけが載るようになる。当然だが元記事にはあなた以外の人もTrackBack pingを送れるので,元記事には,あなたも含めてTrackBack Pingを送ったすべての人のコメントがリストアップされることになる。

 また,あなたも自分のサイトでTrackBack機能を設ければ,誰かがあなたの意見に対し,TrackBack pingを送ってくれるようになる。こうして,複数のサイトが関連する話題でつながることになる。コメントがインターネット上で網の目のように結ばれるのだ。これによって,日本に以前からある日記サイトとは違う文化を創り出していると考えられる。

注2:送り先として,元記事が指定するURLを使うが,このURLのことを「TrackBack Ping URL」と呼んでいる。「http://www.XXXX.co.jp/mt-tb.cgi/128」のような形になっている。「XXXX...」はそのサイトのドメイン名。最後の「128」は元記事を特定する数字で「TrackBack ID」と呼ばれている。なおTrackBackの技術仕様(翻訳)は「LowLife.jp」のblogサイトに掲載されている。

■用途はあらゆる方面に・・・

 Movable TypeはTrackBack以外にも,カテゴリ分け機能,コメント追加機能などがあり,これらが人気を博しているようだ。また,Menaがデザイナということもあってか,Movable Typeのページ・テンプレート機能は充実している。これにより,Movable Typeは見栄えのよいblogサイトが手軽に構築できるツールとして評判が高い。

 こうしたツールの登場がbloggerの急増の一要因となっているのはもちろんだが,blogそのものが,新鮮な体験として人々を魅了しているというのも事実のようである。bloggerの大半はアマチュアで,趣味でbloggingしている。したがって独断的な内容が含まれることもあるが,中にはプロのジャーナリストからはなかなか出てこない,意表をつく視点が示されるなど,良質な情報もあるという(関連記事)。

 また,プロのジャーナリストもblogを公開していることがある。blogはそうした人の意見を身近に,リアルタイムで得られる媒体としても注目されているのだ。2001年の同時多発テロ,そして今起こっているイラク戦争といった社会的な背景も,blogが急速に普及した要因であると言われている。

 なお,blogの用途は何も個人的なものだけに限られない。プロジェクト推進や製品開発といった協調作業の場としても利用できるし,商品開発でモニターの意見を吸い上げるマーケティングのツールとしても利用できる。教育現場でも用途は広い。

 Winer氏によれば,bloggingは最終的に,電子メールやワープロのように,基本的な技能と言われるものの1つになるという。「文章を書くことと同じようなことになる」(同氏)

 なるほど。こうして書く私の文章も,blogを使えばもう少し楽になるかも知れない。書きかけの原稿をblogに掲載して,デスクや同僚,部下から指摘してもらうのだ。それぞれの分野の詳しい人から逐一指摘してもらうことで,作業が速くなるのではないだろうか。

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