1カ月ほど前,知人から「自宅のパソコンに問題があるので調べてもらえない?」と頼まれた。最初は,ウイルスの被害にでも遭ったのかと思ったが,いざ調べてみると,最近話題の「スパイウエア」が原因だった。スパイウエアの種類によっては,ウイルスよりも大きな被害をもたらす場合がある。今回の記事では,筆者が実施したスパイウエア駆除作業を紹介する。「パソコンの調子が何かおかしい」と思っている方は,参考にしていただきたい。

ホームページがアダルト系サイトに

 筆者に連絡をくれた知人は,セキュリティに関して全く気を使っていなかった。パソコンを購入してから一度として「Windows Update」を実施していないというし,ウイルス対策ソフトもインストールしていないという。このため,「ウイルスに感染したために調子がおかしいのだろう」と考えた。もしそうならば,とりあえずウイルス対策ソフトの体験版をインストールさせて,現在感染しているウイルスを駆除すれば問題は解決だ。その後は,製品版の購入を勧めればよいだろう――。そう考えていた。

 ところがその週末,知人宅に訪問すると,予想とは様子が異なっていた。説明を聞いてみると,「Internet Explorer(IE)を起動したときに表示されるホームページがいつのまにか変わってしまった。設定を何度元に戻しても,“この”ホームページになってしまう」とのことだった。実際にパソコンを見てみると,IEの「インターネットオプション」で「ホームページ」の設定をいくら変更しても,IEの起動時には,それとは異なる特定のURLのページが必ず表示されてしまう。

 悪いことに,必ず表示されるそのページは,アダルト系サイトを検索するページだった。そのパソコンは知人の娘さんも使っているので,早急に対処する必要があった。

 そこで原因を考えてみた。思いついたのが,最近,雑誌やWebなどで目にすることが多い「スパイウエア」だ。IT Pro読者には,いまさら説明するまでもないだろうが,スパイウエアとは,パソコンの情報やWebサイトの閲覧状況などを収集したり,IEなどの環境設定を変更したりするソフトウエアである。フリーのソフトウエアなどに“同梱”されている場合が多いようだ。

 ユーザーに知られずに情報収集するために“スパイ”の名が付いているが,ソフトウエアのインストール時に表示される利用許諾には「ユーザーの情報を収集します」といった条件が書かれている場合もある。こうしておけば,「ユーザーも同意済みなので違法ではない」と言い張れるとの考えがあるのだろう。

 一方,ユーザーに特定の広告を無理やり見せる「アドウエア」というソフトウエアも存在する。これは,スパイウエアとは異なり,ユーザーの情報を盗むようなことはしない。ただ,喜ぶユーザーが少ない(ほとんどいない)点では,スパイウエアと同じだ。

無償のスパイウエア対策ソフト

 スパイウエアが原因のようなので,インストールされているスパイウエアを“駆除”すれば,問題は解決しそうだ。だが,スパイウエアやアドウエアは,ウイルスとは異なり,ユーザーに被害を与えることを目的とはしていない。個人情報の収集や広告などの表示が主な目的だ。しかも,ソフトウエアの利用許諾に,これらをインストールすることをうたっている場合もある。スパイウエアやアドウエアは“灰色”の存在で,“悪”と断言することが難しい。