今回のコラムも,最近のWindows関連のセキュリティ・トピックスを整理する。相変わらずセキュリティ・ホールが続々報告されている。特筆すべきは,IISおよびMicrosoft VMに相次いで見つかったセキュリティ・ホールである。サーバーやユーザー・マシンのシステムを乗っ取られる可能性があり,最悪のセキュリティ・ホールといえる。

 以下に10月20日時点の情報を,入手先ごとに整理した。 順に見ていこう。

新規のセキュリティ・ホール情報は5件,
IISとMicrosoft VMに見つかった問題は最悪

 まず,「Microsoft Security Bulletin」にて,Windows 98/98SE/Me,及びWindows 2000が影響を受ける,(1)「HyperTerminal Buffer Overflow」問題が公開された。「HyperTerminal」とはWindowsが用意しているTelnetクライアントのひとつ。HyperTerminalのTelnet URLを処理するコードに問題があり,HTMLメール経由でオーバーフロー攻撃を受ける可能性がある。攻撃されると,悪意があるユーザーに任意のコードを実行される恐れがある。

 英語版用のパッチはリリースされたが,日本語版はまだである。しかし,Windows 2000の場合,「HyperTerminal」はデフォルトのTelnetクライアントではないため,影響は小さいであろう。

 次に,Windows 2000,およびWindows NT 4.0が影響を受ける(2)「NetMeeting Desktop Sharing」問題が公開された。NetMeeting バージョン3.01には,DoS(サービス妨害)攻撃を受ける可能性がある。攻撃を受けると,CPU使用率が100%となり,一時的にNetMeetingサービスが妨げられてしまう。この問題についても,英語版用のパッチはリリースされたが,日本語版はまだである。しかし,Windows NTには,NetMeetingアプリケーションはデフォルトではインストールされていない。また,あらかじめインストールされているWindows 2000でも,デフォルトでは起動されないため,影響は小さいと考えられる。

 「マイクロソフト セキュリティ情報」では,Windows 2000に含まれるIIS 5.0と,Windows NT 4.0用の最新版であるIIS 4.0が影響を受ける(3)「Web サーバー フォルダへの侵入」のぜい弱性に対する対策が公開された。悪意があるWeb閲覧者が,ターゲットとしたWebサイトに対し,特定の種類の誤ったURLを要求することで,破壊的な操作を行える可能性がある。可能な操作は,データの追加や変更,削除に加えて,既にサーバーに存在するコードの実行や,サーバーに新しいコードをアップロードしての実行などと幅広い。

 このセキュリティ・ホール用の個別パッチは公開されていないが,すでに公開されている「マイクロソフト セキュリティ情報 MS00-057」用の修正パッチによって問題の発生を回避できる。過去に例を見ないほどの致命的なセキュリティ・ホールであるため,MS00-057用の修正パッチが未適用である場合,早急に対応が必要だ([関連記事]へ)。

 なお,「マイクロソフト セキュリティ情報」には記載されていないが,これらのパッチの適用条件として,Windows NT 4.0の場合はサービスパック 5もしくは6aが前提条件となる(Windows 2000の場合には,サービスパック 1の適用は前提ではない)。注意しておこう。

 また,Microsoft Internet Explorer の4.xと5.xが影響を受ける(4)「キャッシュされたWebアカウント情報」問題が公開された。このぜい弱性を悪用すれば,悪意のあるユーザーが,ほかのユーザーのWebサイトへのアカウント情報(ユーザーIDとパスワード)を取得できる可能性がある。この問題についても,英語版用のパッチはリリースされたが日本語版はまだである。ただし,Internet Explorer 5.5ではこのぜい弱性の問題は発生しないので,気になるユーザーはこれを機にバージョンアップをするのも手であろう。

 最後に,Windows 95/98/Me,およびWindows 2000/NT 4.0が影響を受ける(5)「Microsoft VM による ActiveX コンポーネントの制御」のぜい弱性に対するパッチが公開された。悪意を持ったWebサイト運営者やメール送信者が,WebページやHTML電子メール経由でターゲットのパソコンを乗っ取れるという,非常に危険なセキュリティ・ホールである。

 日本語版Windows 95/98/Me,およびWindows NT 4.0に適用可能な,3xxxシリーズのビルド(Microsoft VMのバージョン番号)に対する修正パッチは現在公開されているが,日本語版Windows 2000および2xxxシリーズ用の修正パッチは公開されていない([関連記事]へ)。しかし,日本語化された「マイクロソフト セキュリティ情報」には記載されていないが,英語情報にはInternet Explorerの「アクティブ・スクリプト」もしくは「Javaアプレットのスクリプト」を無効にしていれば回避可能と記載されている。実際にはこれらに加え,Java機能を無効にしても回避可能である。

 今回のセキュリティ・ホールに限らず,他の様々なセキュリティ・ホールに対しても,「Javaの無効化」で回避できる場合は多い。Internet Explorerなどのセキュリティ・ホールが心配なユーザーは,最低限Javaを無効化しておこう。無効化の仕方は次の通り。まず,Internet Explorerの「ツール」メニューの「インターネットオプション」の中の「セキュリティ」タブを選び,「インターネット」ゾーンの「レベルのカスタマイズ」から「Microsoft VM」の項目にある「Javaの許可」で「Javaを無効にする」に設定し,OKボタンをクリックすれば完了である。ついでに,「Active Xコントロールとプラグイン」の項目の各設定もすべて無効化しておくと,より安心だ。

Windows 2000は日本語版対応パッチが2件公開

 「Microsoft ダウンロード センター」では,「マイクロソフト セキュリティ情報」でアナウンスされていないWindows 2000用のパッチが2件公開された。(1)「(MS00-067)『Windows 2000 Telnet クライアントの NTLM 認証』のぜい弱性に対する対策」パッチと,(2)「(MS00-065)『静止画像サービスを利用した権限の昇格』のぜい弱性に対する対策」パッチである。 これらは,正式にはアナウンスされていないため,自己判断および自己責任で,検討あるいは適用する必要がある。なお,(1)のダウンロード用ページには,一部リンクの間違いがあるので注意が必要である。本来はMS00-067へのリンクになっているべきところが,MS00-050へのリンクとなっている。

便利な「セキュリティ 警告サービス」だが
重要度が分かる工夫を

 Windowsのセキュリティ関連情報を速やかに入手したい管理者は,最低でもマイクロソフトが公開する「マイクロソフト セキュリティ情報」をこまめにチェックすることが必要だ。しかし,定期的にチェックするのは,実際には大変で,ついおろそかになってしまう管理者は多いだろう。そんな管理者には,こうした情報をメールにて随時知らせてくれる無償サービスの「マイクロソフト プロダクト セキュリティ 警告サービス 日本語版」がお勧めだ。

 例えば,今回の「(MS00-078)『Web サーバー フォルダへの侵入』のぜい弱性に対する対策」の場合,「マイクロソフト セキュリティ情報」では10月20日にWebサイトで公開され,「マイクロソフト プロダクト セキュリティ 警告サービス 日本語版」の電子メールは10月21日の13時27分に私のメールボックスに届いた。

 もちろん,無償のサービスとしては健闘している。しかし,内容が事務的で,今回のように深刻なセキュリティ・ホール情報でも,一般のセキュリティ速報と同じように配送される。そのため,一般の管理者やユーザーは,その重要度に気づきにくい。重要度が分かるように,電子メールの表題を工夫するなどして,ユーザー側のスタンスに立った,より分かりやすい広報を望みたい。

Microsoft Security Bulletin (英語情報)

 ■(MS00-079) Patch Available for "HyperTerminal Buffer Overflow" Vulnerability (October 18, 2000)

 ■(MS00-077) Patch Available for "NetMeeting Desktop Sharing" Vulnerability (October 13, 2000)

マイクロソフト セキュリティ情報

 ■(MS00-078) 「Web サーバー フォルダへの侵入」のぜい弱性に対する対策(回避方法公開:2000年10月20日)  

 ■(MS00-076) 「キャッシュされた Web アカウント情報」のぜい弱性に対する対策(日本語解説公開:2000年10月16日)

 ■(MS00-075) 「Microsoft VM による ActiveX コンポーネントの制御」 のぜい弱性に対する対策(パッチ一部公開:2000年10月16日)

Microsoft ダウンロード センター

 ■ (MS00-067) 「Windows 2000 Telnet クライアントの NTLM 認証」のぜい弱性に対する対策
 □ Windows 2000用の正式にはアナウンスされていないパッチ(2000年10月17日)  

 ■(MS00-065) 「静止画像サービスを利用した権限の昇格」のぜい弱性に対する対策
 □ Windows 2000用の正式にはアナウンスされていないパッチ(2000年10月18日)

「マイクロソフト プロダクト セキュリティ 警告サービス 日本語版」


山下 眞一郎(Shinichiro Yamashita)
株式会社 富士通南九州システムエンジニアリング
第二ソリューション事業部システムサービス部 プロジェクト課長
yama@bears.ad.jp


 「今週のSecurity Check [Windows編]」は,IT Proセキュリティ・サイトが提供する週刊コラムです。Windows関連のセキュリティに精通し,「Winセキュリティ虎の穴」を運営する山下眞一郎氏に,Windowsセキュリティのニュースや動向を分かりやすく解説していただきます。(IT Pro編集部)