(2001.1.29)

 米Kana Communicationsの日本法人カナ(本社東京,杉本弘康ゼネラルマネージャー)が,ダイレクト・メール(DM)配信システム「Kana Connect v.6」日本語版を2月から出荷すると発表した。

 カナ日本法人は2000年7月の設立。主力製品は,電子メールでの問い合わせなどへの返信を支援するソフト「Kana Response v.5」で,2000年春から日本語版の出荷を開始。これまでに日本では約30社に販売,このうちニフティなど約20社で稼働しているという。

「見込み客の絞り込み」と「効果分析」が特徴

 今回発表した「Kana Connect」は,日本での第2弾となる製品。顧客/見込み客のデータベースを元に,属性で絞り込んだ電子DMを配信するためのマーケティング支援システムだ。
 米Kanaは世界で900社以上の顧客を持ち,その大半は「Kana Response」のユーザーだが,同じメール系の「Kana Connect」も金融機関,通信事業者など100社程度に導入されているという。
 Kana Connectは「有効な見込み客に絞り込んで送付できること,送付後の受信者の行動を分析し次のマーケティング活動にフィードバックできること,メールの送付を確実に行うことが特徴」(カナの荒川勝也プリセールス マネージャー)だとしている。

 第1の「絞り込み」では,見込み客の属性プロフィール(性別・年齢など),好み,関心の3つの基本要素で絞るほか,「RFM」(Recency/Frequency/Monetary)分析でも絞り込める。「“好み”や“関心”はWWWサイトへの顧客の訪問履歴を分析して自動更新することができる。RFMでのR(最近の接触)ではサイト来訪やDM送信時期,F(頻度)ではサイト来訪や購入の回数,M(金額)では購入額などを条件として絞りこみが可能」(カナ)。

 第2の「効果分析」では,メールに埋め込んでおく情報により,DMの送付先1つ1つについての返信/開封/サイトへの訪問/購入といった反応をリアルタイムで集計/管理できるという。「さらに“口コミ”のように,DMが知り合いに転送されてサイトへの訪問や購入につながったということも,統計分析で把握できる」(カナ)。

 そのほかカナでは,一部のサンプルの送信とその反応の分析,大量送信時のトラフィック制御,XML/XSLなどで文面のパーソナライズ,文面の中のURLの正確性照合,などの機能をKana Connectの特徴としてあげていた。
 なお,Kana Connectの日本での価格については「プロフィール数に応じた料金体系になる見込みだが,未定。出荷時までに改めて発表する」(杉本ゼネラルマネージャー)。しかしKana Connectの日本での売上目標は「10億円」となぜか明確であった。

今年後半に「サービス」全般をカバーする製品も投入

 米Kanaはここ数年で合併を繰り返しながら製品ラインアップを拡充し,急速に業容を拡大してきた。日本ではここまで,メール関連の2製品を発表しただけだが,米国ではWebメール/チャット/インスタント・メッセージ/VoIPなど多様な通信チャネルに対応するソリューションを持つ。
 さらにこれらを整理して,「顧客プロフィール」「ルール/イベント・エンジン」「ナレッジ・マネジメント」「パーソナライズ」などの共通機能をまとめた「eビジネス・プラットホーム」と,通信チャネルに横断的な「マーケティング」「サービス」「セールス」「EC」の4つの分野の「eビジネス・アプリケーション」に集約しつつある。「現行の通信チャネル別のソリューションは1年後ぐらいには,この基盤の上でEJB部品として実現される形になっていく」という。

 日本法人のカナでは,メール以外の通信チャネル用の個別ソリューションの品ぞろえの強化については,現時点では「インターネットの基盤が整備されていない」として消極的。
 そのかわりに,「今年第3四半期~第4四半期に,eビジネス・アプリケーションの1つの「サービス」と,「eビジネス・プラットホーム」を日本でも出荷する予定だ」(荒川マネージャー)としていた。
 この「サービス」は顧客サポート全般を支援するソリューションになる。オペレータ支援サイドの機能では,従来の「Kana Response」が持つ自動回答などの機能に営業訪問履歴などの情報管理機能も追加。さらに顧客のセルフサービス用のサイトとして,自ら検索する知識ベース,FAQ,購入履歴などの構築機能も提供することになる。

 「当社はCRMの先の新市場eRM(enterprise Relationship Management)を目指す。顧客との対話を合理化して最小化しようとするのがCRM。それに対して顧客との対話をさらに増やし,関係を深めようとするのがeRM。eRMはより早く,回数を多く回答することで,顧客満足度をあげる」というカナ。
 その製品としては今後,顧客との対話の形をAIでの仮想応対,メールなどでの情報配信,セルフサービス,人間による応対と多様化する姿をイメージしているという。

米国では始めているASPサービス,日本ではパートナ任せ

 Kanaは「メールへの回答支援」という,CRM系ベンダーの中ではニッチ系ソリューションのイメージが強い。だがその将来構想は,Siebel,Vantive(米PeopleSoft傘下),Clarify(加Nortel傘下)などのCRM大手のそれに匹敵する広がりを持つようだ。
 気になる点としては,売上約1.2億ドル,従業員1100人規模に膨れ上がった米本社と,まだ従業員14人,メール系ソリューションに特化している段階のカナ日本法人の,環境の違いが大きすぎるように見えることだ。
 ちなみに米Kanaは,自社で「Kana Connect」「Kana Response」のASPサービスも開始しているが,日本では「ASP事業はパートナ(NTTソフト,日本IBM,日本ユニシス,富士通系のジー・サーチの4社)にお任せする」とのことであった。

(千田 淳=IT Pro編集)

◎参考資料
米Kana日本法人「カナ」のWebサイト
米Kanaの「Kana Connect」のサイト
米Kanaの「Kana Response」のサイト
米Kanaの「Kana Service」のサイト

米Kanaが1月24日付けで発表した2000年度決算。売上額は前年の約8.5倍の約1億2000万ドルだが,買収に伴う経費/償却などを巨額計上した結果,純損失30億7000万ドルと報告している

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