エンターキナー,韓 芝馨

 韓国では「インターネットでは何でも無料」という認識を持つユーザーが多いと筆者は考えていた。ところが最近では,有料コンテンツに対する理解が進み,実際に購入するユーザーが増えている。この変化に大きな役割を果たしたのが,便利なオンライン決済方法「携帯電話決済」である。今回は,韓国の有料コンテンツ市場をけん引している携帯電話決済について解説するとともに,携帯電話決済の今後を考えてみたい。

有料コンテンツに対する意識が変わった

 情報通信部(www.mic.go.kr)と韓国インターネット振興院(www.nida.or.kr)が実施した有料コンテンツに関する調査結果が,2005年2月5日に発表された。それによると,インターネットで有料コンテンツを購入したことがあると答えたユーザーは,全体の23.3%だった。2004年2月の調査結果では14.5%だったので,この1年間で大きく増加したことが分かる。また,「今後購入するつもりである」と答えたユーザーは全体の34%にのぼった。

 冒頭で述べたように,つい最近まで,韓国のインターネット・ユーザーの多くは「インターネットでは何でも無料であるべき」という認識を持っていたと筆者は考えている。というのも,以前の“インターネット・バブル期”には加入者の囲い込みを狙って,プロバイダの多くがコンテンツを無料で提供していたためだ。

 ところが,上記の調査結果を見ると,有料コンテンツ購入に対する韓国ユーザーの認識が,大分肯定的になったことが分かる。韓国ソフトウエア振興院(www.kipa.or.kr)では,2005年の韓国における有料オンライン・コンテンツの市場規模を4兆ウオンと予測している。

 なぜ,韓国において有料コンテンツ市場が形成され始めたのか。その理由はいろいろ考えられるが,最も大きな理由の一つは「使いやすい小額決済方法の登場」にあると筆者はみている。現在韓国では,ゲームやコミュニティ・サイトでのアイテム購入や,映画や音楽といったデジタル・コンテンツ購入のために,さまざまなオンライン決済手段が登場している。例えば,人気があるオンライン・ゲーム会社Webzen(www.webzen.co.kr)では,10種類の決済手段を用意している。「使いやすい小額決済」抜きに,韓国の有料オンライン・コンテンツ市場の発展は語れない。

携帯電話/固定電話決済の具体的手順

図1 携帯電話決済の利用方法
図2 固定電話ARS決済の利用方法

 多数ある決済手段の中で最もよく利用されているのが,携帯電話や固定電話を使った決済方法である。オンライン決済会社Danal(www.danal.co.kr)が2004年10月に発表した資料によると,3万ウオン以下の小額コンテンツを購入するときに利用される決済方法は,携帯電話を使った方法(携帯電話決済)が65%, 固定電話を使った方法(固定電話ARS決済)が25%, クレジット・カードが10%――だそうだ。以下,携帯決済と固定電話ARS決済について具体的に説明しよう。

 携帯電話を使った携帯電話決済は,2000年7月,Danalが韓国で最初に商用化した。携帯電話決済では,ユーザーの携帯電話番号と住民登録番号(PIN:Personal Identity Number)を使って決済する。決済した有料サービスやコンテンツなどの料金は,携帯電話料金と一緒に請求される。1カ月間に決済できる金額の上限は,携帯電話会社によって異なるものの,およそ10万ウオン程度である。

 図1に携帯電話決済の画面を示す。まず,決済画面で携帯電話決済を選択すると,携帯電話番号と住民登録番号の入力画面が現れる(図1上)。その画面に自分の携帯電話番号と住民登録番号を入力すると,入力した番号の携帯電話に承認番号が送られてくる。そして,次に表示される画面にその承認番号を入力すると決済が終了する(図1下)。

 固定電話を利用した固定電話ARS決済と呼ばれる方法では,固定電話の加入電話番号と住民登録番号を利用する。具体的な手順は図2のようになる。固定電話ARS決済を選択すると,電話番号と住民登録番号の入力画面が表示される(図2上)。

 指示に従ってこれらの番号を入力すると,ARS電話番号と課金番号が画面に表示される(図2下)。このARS電話番号に電話をかけて,電話の案内に従って課金番号を送ると(ダイヤルすると)決済は終了である。決済した料金は固定電話料金と一緒に請求される。1カ月間に利用できる上限金額は7万ウオンである。

ユーザーに支持される携帯電話決済

 前述のように,小額コンテンツの決済に最も使われている携帯電話決済。この携帯電話決済は,韓国の有料オンライン・コンテンツ市場の拡大において,とても大きな役割を果たしたと評価されている。例えば,オンライン決済会社Infohub(www.infohub.co.kr)のイ・ゾンイル社長は「『携帯電話決済のおかげで,有料オンライン・コンテンツが光を発するようになった』と言っても過言ではない」と新聞のインタビューに答えている。

 携帯電話決済は,携帯電話に送信される承認番号を入力するだけで決済できるのでとても簡単だ。しかも,決済したコンテンツ利用料金は,携帯電話料金と一緒に請求されるから,クレジット・カードを持たない未成年者や,クレジット・カードで小額決済することがわずらわしいユーザーに人気を集めている。