社内の誰が、どのような業務や技術に精通しているのかといった人材情報を蓄積し、検索できるようにした仕組み。人事データベースを発展させたり、社員自身に得意分野を登録してもらって構築することが多い。社内の専門知識やノウハウをスムーズに流通させるナレッジ・マネジメントには、欠かせない要素の1つ。

 業務上の課題に直面したとき、頼りになるのは“人脈”です。どの企業にも、特定分野に詳しい専門家や、優れたノウハウを持つエキスパートが必ず存在します。社内の誰が、どんな専門知識を持つのかを知っていれば、いざというときにその人の助けを借りられます。

 実際、「この技術に最も詳しいのは、設計部のS課長だ。電子メールで問い合わせてみよう」などと、自らの人的ネットワークを通じて知識やノウハウを得る場面は、想像以上に多いものです。こうした人材情報をデータベース化するなど、広く社内で利用できるようにした仕組みをノウフー(Know Who)と呼びます。

◆効果
社内の人材マップ

 ノウフーは、ナレッジ・マネジメントを推進するうえで非常に重要な役割を果たします。なぜなら、現場で必要とされている知識やノウハウの多くは、教科書やマニュアルのように文章で表現することが難しいからです。分からないことは直接、熟練者や専門家に尋ねたほうが、細かいニュアンスや状況に合わせた応用法などがスムーズに伝わるものです。

 しかも、最近のリストラや事業再編などにより、ノウフーの重要性はますます高まっています。

 例えば、製造業におけるモノづくりの現場では、高度な技能を磨いてきた熟練社員がリストラによって急激に減少。モノづくりのノウハウの継承に、危機感を募らせています。

 事業再編やM&A(企業の合併・統合)に伴う人材の流動によっても、社員は従来の人脈を再構築する必要が出てきます。ノウフー・データベースがあれば、新しい環境でも必要な人材を探しやすくなるのです。

◆事例
個人ホームぺージを活用

 ノウフーの具体的な仕組みは様々です。専用のシステムを用意する場合もありますし、イントラネットに各社員が個人ホームページを立ち上げることで代替するケースも少なくありません。

 NTT東日本の法人営業本部やNTT西日本の三重支社では、社員がそれぞれのホームページをイントラネット上に持っています。ホームページには自分の業務経歴や特技などを公開します。

 さらに、イントラネットで共有する業務文書や情報には、必ずその作成者の名前を明記。そこから各人のホームページにリンクを張っているため、ある情報を見ていて「作成者にもっと詳しい話を聞きたい」といった場合も、簡単に相手を探せるのが特徴です。

 一方、松下電器産業はモノづくりにかかわる社員を対象に、「誰が、どのようなスキルや専門知識を持っているか」といった情報を集約し、セキュリティに配慮しながら社内で共有するノウフー・データベースの構築に取り組んでいます。

花澤 裕二 hanazawa@nikkeibp.co.jp