Eclipseといえば、オープンソースの開発環境として有名なソフトウエアである。Javaを使う開発に携わる読者であれば、名前を聞いたことがあるのではないだろうか。

 そしてIBMの開発ツール「WebSphere Studio」は、Eclipseをベースとした製品である。この両者の違いは何か。その点を聞いてみた。

 「Eclipseという切り口から見れば、WebSphere Studioは、Eclipseと有料プラグイン製品の組み合わせに過ぎない、とも言えます」。日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業部の串宮平恭氏はそう語ってくれた。

 Eclipseは開発ツールの土台となる部分を提供する。土台の部分は無償である。その上に多数のプラグインが提供されている。オープンソースのプラグインもあれば、有料のプラグインもある。WebSphere Studioとは、ある意味ではEclipseに付加価値を提供するプラグイン製品の一つなのである。

「有料分」の機能は、どんな内容か

 では、Eclipseにはないプラグイン機能は何があるのか。無償で手に入るEclipseをベースにした有償製品を買う意味はどこにあるのか。

 この8月末にリリースしたWebSphere Studio Site Developer V5.1は143,000円からという価格である(その上位製品として、EJB開発機能などを強化したApplication Developerがある)。

 「WebSphere Studio Site Developerですが、この価格でこの内容はむしろ安いと思っています。Eclipseと同じ操作環境を持っていながら、他の商用ツールと比べてもお買い得な機能を持っています」と串宮氏は主張する。その根拠となる付加価値機能として、以下のものを挙げる。

(1)JSPやStrutsフレームワークを実行イメージを見ながら、ビジュアルな環境で開発できるデザイン・ツール。
(2)Webサービス開発用ウィザード。「WS-Iに対応しているか」をチェックする機能など、最新のWebサービス技術に対応する。
(3)性能チューニングに利用できるプロファイリング機能。シーケンス図の表示を見ながら、処理時間がかかっているオペレーションを発見できる。

Webデザイナー向けにも利用可能な機能群を備える

 これらの付加機能のうち、デザイン・ツールに関してさらに話を聞いた。

 串宮氏が挙げるのは、JSPを生きた状態でデバッグできるページ・デザイナー機能。Eclipse単体だとJSPの開発機能は弱いが、WebSphere Studio Site Developer V5.1では、JSPコードにブレークポイントを設定しながらデバッグすることが可能である。
 Webアプリケーションの開発では、よく「HTMLによるデザインと、JSPやバックエンド・ロジックによるプログラミングの部分は別々に開発できる」といった説明を聞く。だが実際には、「デザイナからは、動かさないとデザインできないと言われる」(串宮氏)。そこで、JSPを、実行時のイメージで表示できる機能を備えたツールの必要性が出てくる。この種のツールとして、このWebSphere Studio Site Developerは「他社製品に比べても高くない」。

 Webアプリケーション構築用フレームワークとして人気があるStrutsにも対応する。ウィザード形式でStrutsベースのアプリケーションを構築を支援する「Strutsビルダー」を備える。Strutsのカスタム・タグを、実行時のイメージで表示できる点が特色である。

 Strutsフレームワーク上で構築したアプリケーションの構造を記述するファイルStruts-configを、ビジュアル開発環境で開発・デバッグできる「ウェブ・ダイアグラム・エディター」も備える。

Web層の開発効率を上げる

 単なるJavaプログラミングであればEclipseは必要十分な機能を備えている。ただ、J2EEアプリケーションの「Web層」、つまりJSPやStruts上のアプリケーション開発の需要は大きい。こうした局面では、Strutsフレームワークや、JSPのカスタム・タグに対する開発支援機能を備えるWebSphere Studio Site Developerは有効となりそうだ。
 Webアプリケーションの開発スタイルは進化しつつある。以上の製品で見られる「Web層の開発支援機能を強化する」という方向性は、Java開発ツールという分野の技術トレンドでもある。Borlandの次期開発ツール「JBuilder X」も、Struts対応機能を追加した。さらに、近い将来にはJSF(JavaServer Faces)の開発支援機能が、各製品に追加されることになる。JSFの仕様の確定からあまり間を置かず、各社とも対応製品を登場させる見込みだ。

(星 暁雄=日経BP Javaプロジェクト)