企業システムの実態を調査するため、ユーザー企業中心に約1200件にアンケート調査を実施した。その結果、Javaの導入状況を始め、企業システムの実態が明らかになった。さらに、調査に基づき自社システムの「偏差値」を調べる診断サービスを実施中である。

 企業システム構築にJavaを導入済みの企業は全体の54.7%、従業員3000人以上の大企業での導入実績は8割を越える--技術者約1200名を対象にした「システム環境実態調査」から、このような実態が分かった。

 この調査は日経BPコンサルティングが、この2003年8月26日から9月4日にかけて、Webサイト上のアンケート・ページを使って実施したもの。ユーザー企業のコンピュータ系技術職を中心に1272件の回答が集まった。

 この調査を元に、日本IBMが「企業システム オンデマンド適性診断」を実施中である。調査結果を基準として、自分の会社のシステムがどのような水準にあるかを診断するというもの。いわば、自社システムの「偏差値」を調べる調査といえる。

 この記事では、この「システム環境実態調査」の概要を報告する。調査結果を、テーマ別に要約すると次のようになる。

(1)エンドユーザーのシステム利用環境--インタフェースの統一進む

 電子メール、電子掲示板など、エンドユーザーを対象としたシステムは、平均6.2個が導入済み。さらに従業員3000人以上の大企業では、9.2個にのぼる。こうした多数のシステムを、「グループウエアのような統一された環境から利用可能」と回答した企業は全体の4割強。また、すべてではなく「7割以上のシステム」を統一環境から利用可能、と回答した企業は6割。エンドユーザー向けのインタフェースは、ある程度統一されてきていることが分かる。

(2)システムの提携・統合--複雑化が進む一方、統合はこれから

 経理・財務、人事、CRMなどの導入状況を尋ねたところ、全体で4.5システム、従業員3000人以上の大企業では6.8システムに及ぶ。これら複数のシステムの基盤となるハードウエア、OS、DBも複数の環境にまたがっている場合が多い。

 このように企業システムが複雑化している一方で、システム間の連携や統合の思想が「すべてのシステム」に反映されていると回答した企業は全体の1割と少数派にとどまった。

(3)DB統合--複数のDBの効率的な運用が課題

 利用されているDBでは、Oracleが全体の63.1%、SQL Serverが55.0%と多く、双璧といえる(合計が100%を越えるのは、「複数回答あり」のため)。Oracleは大企業に、SQL Serverは小企業に強い。続く製品では、企業規模が大きい場合はDB2、小企業ではPostgreSQL。特に従業員100人未満の小企業ではPostgreSQL導入が18.6%と目立つ。

 ミッション・クリティカルなDBサーバーは2~4という回答が多く、重要なデータベースが複数存在することは一般的な状況となっている。

 この複数のデータベースを、効率的に利用できる環境が整っているかというと、まだまだのようだ。すべてのDBについて別々にログインしなければならない企業が4割を占める。仮想DBから全DBへアクセスできる先進的な環境を持つ企業は1割にとどまる。

(4)セキュリティ--シングル・サインオンはまだまだ

 エンドユーザー向けのアクセス制御、個人認証システムの導入は進んでいる。「ほぼすべてのシステムで導入」との回答が5割、従業員3000人以上の大企業では7割にのぼる。

 ただし、7割近くの企業でエンドユーザーは複数のIDやパスワードを覚えさせられる。ID、パスワードを一元的に管理している企業は全体の1割に過ぎない。

(5)システム開発--小規模プロジェクトが多数派

 「最も標準的なプロジェクト」の開発要員の規模「1~9名」が65.6%。3000名以上の大企業で見ても、30名未満のプロジェクトが全体の61.9%を占める。その一方で、「500名以上」の巨大プロジェクトを挙げた回答が、3000名以上の大企業では3.1%もある。

 また、「最も標準的なプロジェクト」1件の開発期間では、「2~6カ月」との回答が64.3%を占めた。10名未満、6カ月以内の小規模プロジェクトが多数派といえる。

 3000人以上の企業に限れば、全体の6割が、各種ツールやフレームワークの具体的な標準化の作業に入っている。こういった大企業の場合、Javaを採用することが多い。全体の8割が導入済みで,このうち2割強が全システムでの統一導入を目指している。

 「Java導入済み」との回答は全体の54.7%で、普及率は過半数を越えている。その一方、100人未満の小企業では「Java導入済み」合計は37.7%とまだ低い。Java導入は大企業が多いとの傾向が明らかになった。一方、「Microsoft .NET導入済み」との回答は、28.6%である。Javaが優勢なものの、.NETも無視できない普及率となってきた。