豊田 孝

 本連載もいよいよ最終回を迎えることになりました。これまでの連載内容から明らかになったように,Windows XPとインターネットは密接な関係にあります。この関係は今後より一層深まることが予想されます。そこで本日は,Windows XP初心者ユーザーのために,楽しみながら,インターネットを学習する方法を紹介します。それでは,早々本論に入りましょう。

インターネット学習教材としてのIE

 「Ineternet Explorer(IE)とは何か」と問われた場合,その回答は人によりさまざまといってよいでしょう。セキュリティ面から不安を訴える人もいれば,最新標準仕様をいち早く実装してくるブラウザであることもあり,その魅力を語り出す人もいるでしょう。本連載記事をこれまでお読みになってきた皆さんは,数値「1」を持つシェル名前空間におかれるオブジェクトがIEである,と回答するかもしれません。ここでは記事内容に具体性を持たせるために,IEを次のように定義してします。

“IEは再利用部品で構成されているWindowsアプリケーションである。再利用部品の中には,インターネットとの関係を抽象化する部品も含まれる”

 この定義文には,IEはWindowsアプリケーションである,という文が含まれています。IEを起動すると,Windowsシステムの管理の下でIEプロセスが生成され,そのIEプロセスは必要に応じて多数のスレッドを作成するのでしたね。忘れてしまった人は,これまでの関連記事を参照してください。

図1●「LastFileOut.exe」補助プログラムの実行画面
図2●目的のURLを入力し,OKボタンをクリックした結果
 定義文の後半部分には,IEはインターネットとの関係を抽象する部品も含んでいる,と述べています。本日は,この部品に焦点を当てます。本日の第1補助プログラム「LastFileOut.exe」(こちらからダウンロードできます)を実行すると,図1[拡大表示]のような初期画面が表示されます。

 ご覧のように,初期画面は閲覧するURL情報の入力を求めてきます。デフォルトでは,本連載の第1回へのURL情報が設定されています。目的のURLを入力し,OKボタンをクリックすると,通常は,約1秒単位でメッセージ・ボックスが繰り返し表示され,自動的に消滅するようになっています。表示されるメッセージ・ボックスを何もせずに眺めていると,最終的に図2[拡大表示]のような画面が表示されてきます。なお,OKボタンではなく,キャンセル・ボタンをクリックすると,現在のインターネット一時ファイル数とクッキー数が報告されてきます(いずれもデフォルト・フォルダ設定時)。これらの数が数千,数万を超えている場合には(中には,10万を優に越えるマシン環境で作業している人もいるようです),削除操作を通して整理することを考えたほうがよいでしょう。Windows XPの起動に必要以上の時間がかかることが心配されます。この補助プログラムを実行すると実感できますが,インターネット一時ファイル数は私たちが予想する以上の早さで増える傾向にあります。

 この画面から分かるように,第1補助プログラム「LastFileOut.exe」はWebサーバーとIEとの通信内容を記録し,それを報告してくれます。この画面では,Webサーバーからダウンロードした画像ファイルの名称などが表示されています。作成されるレポート・ファイルには,クッキー数やインターネット一時ファイル数が増える様子も記録されています。訪問したWebサイトによっては,膨大な数のファイルが皆さんのハードディスクにダウンロードされるはずです。この意味では,自分のマシン環境をインターネットに接続するということは,コンテンツの閲覧に加えて,次のような性質を持っているといえます。

  • 自分のマシン環境を更新することである
  • ハードディスク容量を消費することである

 これらの性質を積極的に活用しているのが,前回紹介した「システムの復元」機能と連動しているWindows XPの「自動更新」機能であるといってよいでしょう。そして,このような傾向は今後一層強まる,といってもよいのではないかと思います。お時間のあるときに,インターネットの各種設定を変更したり,あるいは,既存のクッキーや一時ファイルをすべて削除したりして,第1補助プログラム「LastFileOut.exe」を実行してみてください。これら2つの性質の意味がはっきりと認識できるはずです。さて,皆さんが訪問するWebサイトはどれくらいの数のファイルを送信してくるでしょうか?また,そのサイトはクッキーを使っているのでしょうか?ぜひ確認してください。

 詳細な説明は割愛いたしますが,Webサーバー種類,Webサーバー混雑度,使用されているイメージ・ファイルの数などに応じて,記録される内容は異なります。記録内容を読むときには,次の2点に注意するとよいでしょう。

・Busy
これは,IEが何らかの作業を行っている最中であることを示します。False(作業をしていない)とTrue(作業をしている)のいずれかの値が入っているはずです。

・ReadyState
これは,IEのWebサーバーの交信状態を示します。この補助プログラムでは3(Webサーバー交信中)と4(Webサーバーの交信完了)が報告されます。

 例えば,補助プログラムが動作を終了すると,通常は次のような情報が,作成されるファイルの最後に書き込まれます。

11:18:18 (閲覧中)Busy --->False ReadyState --->4
ページが表示されました
http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/ITARTICLE/20011004/1/
Windows XPの新機能を体験しよう(第1回)

 ご覧のように,BusyはFalse(作業をしていない)とReadyStateは4(Webサーバーとの交信完了)となっています。これはすべてのイメージ・ファイルのダウンロードがすでに終了し,要求したファイルが現在表示されていることを示しています。このような情報が表示されるまで,どのくらいの時間がかかるのでしょう?いろいろなURL情報を入力し,後日試してみてください。

詳しい交信内容を見る

 本日の第2補助プログラム「No16LogOut.exe」(こちらからダウンロードできます)は,より詳細な交信内容と動作内容をイベントログに記録します。例えば,次のような情報が書き込まれます。

11:57:57_Busy =>True ReadyState=>1

プロキシの設定を検出しています...

11:57:57_Busy =>True ReadyState=>1

サイト itpro.nikkeibp.co.jp を探しています

11:57:57_Busy =>True ReadyState=>1

サイト 202.214.174.88 に接続しています

11:57:57_Busy =>True ReadyState=>1

Web サイトが見つかりました。応答を待っています...

 ご覧のように,「探しています」,「接続しています」,あるいは,「待っています」などの表現が見えます。これらの表現は,IEと目的のWebサーバーの間には,ある意味,予測できない不安定な関係が存在することを示しています。

 初心者の方は,最初のうちはイベント・ログに記録される内容をすべて理解できないかもしれません。しかし,他の入門記事などを読みながら,日々基礎知識を積み上げていけば,「itpro.nikkeibp.co.jp」という文字列が「202.214.174.88」というIPアドレスに変換され,目的のWebサーバーに接続される様子を,実感を持って理解できるようになるはずです。なお,イベント・ログ内容を見る場合,次のような4つのイベント・ログ機能を活用するとよいでしょう。

  • イベント・ログ内容をTXTファイルを含む3種類のファイルとして保存する機能(「アプリケーション/すべてのイベントを消去」メニューから利用できる)
  • イベントを新しい順に並べ替える機能(「表示」メニューから利用できる)
  • イベントを古い順に並べ替える機能(「表示」メニューから利用できる)
  • ログ・ファイル・サイズの増減機能(「アプリケーション/プロパティ/ログサイズ)

 入力したURLによっては,1000を超えるイベントが記録されることがあります。このため,これら4種類の機能を効率的に活用してください。

 本連載はこれで終了いたしますが,IEは本連載で紹介した多数の「シェル名前空間」を内部で使っています。「お気に入り」,「メディア」,「クッキー」,「履歴」,「インターネット一時ファイル」などはすべてシェル名前空間です。連載を継続してお読みいただいた方は,IEをはじめとするMicrosoftを代表するソフトウエアを目にしても,機能の表面だけではなく,その内部動作や構造もかなり想像できるようになっていると思います。

 本日の補助プログラムは,Microsoft開発者が用意した「COMコンポーネント」と呼ぶ再利用部品を組み合わせて完成させています。これはMicrosoft開発者の技術力に全面的に依存するという負の面を否定できませんが,自分の問題へのソリューションを効率的に見い出すことができるという明確な利点ははっきりさせています。

 また,インターネット経由でアプリケーション・プログラム間の連携を可能とするのがWebサービスというのなら,この補助プログラムは初歩的とはいえ,Webサービスも呼び出すことができます。

 たとえば,ITProには,「アクセスランキング」や「参考になった記事ランキング」がありますが,これらはある意味で,(XMLサービスならぬ)HTMLサービスといってもよいでしょう。IEから目的のランキング情報を要求すると,IT ProのWebサーバーはHTMLタグ・ベースのランキング情報を返してくれます。ここで行われるのは,IEアプリケーションとWebサーバー・アプリケーションの連携以外の何ものでもありません。後日ぜひランキング情報を要求し,返されるまでの様子をイベント・ログに記録してみてください。

 XMLサービスも内部ではHTTPプロトコルを採用しているといわれます。しかし,SOAPと呼ばれる別の標準仕様書作成に直接参加したMicrosoftのDon Box氏は,HTTPプロトコルに代わるプロトコルが必要であると主張しています(Webサービス側からの応答に時間がかかった場合,クライアント側ではどうしようもない,というのがその最大の理由のようです)。イベントログに記録されるイベント情報を眺めながら,Box氏の主張をご自分なりに考えてみてください。最後になりましたが,本日の補助プログラムの実行は自己責任とさせていただきます。

 それではまたどこかでお会いいたしましょう。その日まで,失礼いたします。