日経Linux
click
メール配信 | 年間購読 | 日経Linuxとは | 広告掲載企業へのリンク&資料請求
日経Linuxは毎月8日発売(地域によって発売日が異なります)


 

Plamo Linuxの特徴とPlamo-3.2における改善点

日経Linux 2003年8月号の付録CD-ROMには,Plamo Linuxの最新版「Plamo-3.2」を収録しています。新版では,シンプルな構成というPlamo Linuxの伝統はそのままに,独自の不具合修正や設定見直しによる画面出力改善やデスクトップ環境の整備,日本語入力機能の拡張など多くの改善を施しています。Plamo Linuxの特徴と,Plamo-3.2における改善点を紹介します。

(Plamo Linuxメンテナ 山内 千里)

Plamo Linux」(以下,Plamo)は,こじまみつひろ氏を中心に,我々メンテナとユーザーが協力して開発する,商用版を持たない完全フリーのLinuxディストリビューションです。LinuxはLinus Torvalds氏個人が趣味で作り始めたOSです。そのLinuxならではのDIY性やホビー性を大切にするという観点から,Plamoでは,システムの過度なブラックボックス化や自動化を施さず,シンプルで見通しの良い構成を採用しています。例えば,パッケージ管理システムや起動スクリプトなどには,シンプルなことで定評があるSlackware Linuxのスタイルを採用しています。

そのためPlamoの設定作業では,他のディストリビューションのようにGUIツールや自動化ツールを多用しません。初期のUNIXなどと同様にエディタで直接設定ファイルを変更するのが基本となっています(設定作業を補助するため,シェル・スクリプトで記述したCUI設定ツールは用意しています)。一見利用が難しいと思われがちですが,設定ファイルに直に触れることでユーザーのシステム理解がスムーズに進むメリットがあります。その設定ファイル自身も,他のディストリビューションのように自動処理に合わせて独自改変を施すことが少ないので,極めて標準的でシンプルな内容となっています。これらのことから,Plamoは,Linuxを「学びたい」方々に適したディストリビューションだと言えます。

教育的な効果を念頭において,ウインドウ・マネージャのメニューからは,dfコマンドやlsmodコマンドなどLinuxのいくつかの基本コマンドを選択・実行できるような設定を入れてあります。これにより,基本コマンドを自然に習得できるメリットがあります。

KDE利用時のPlamoのデスクトップ画面

写真1 Plamo-3.2のデスクトップ

使い勝手に独自のこだわりを持つ

シンプルなシステム構成と書いたことで,「味気なく使い勝手の悪いユーザー環境なのでは?」と想像される方もいるかもしれません。しかしPlamoでは,ソフトウエアを厳選し,さらに設定を煮詰めることで,シンプルながら見栄えや使い勝手の良いユーザー環境を提供しています。写真1のようにデスクトップ環境にKDEを選択することもできますし,アンチエイリアス処理を施した美しい文字描画も可能です。

特に,ユーザー環境の設定調整は,Plamoの開発で時間をかけている部分の一つです。これを象徴するのが,Plamoのバージョン更新に伴って,標準のユーザー設定ファイルの数やサイズが増加していることです。例えばPlamo-3.2では,Emacsの設定ファイル「~/.emacs」が1400行を超えています。もちろん,これらの設定ファイルは,できるだけ標準的なファイル構成や内容を維持するように作られているのは前述した通りです。

またPlamoでは,「デスクトップPC用」と「ノートPC用」の2種類のユーザー設定ファイルを用意するのが伝統となっています。ノートPC用の設定では,解像度の低い液晶ディスプレイの利用を想定して,フォントやウインドウ・サイズを小さめに設定してあります。こういった細やかな配慮もPlamoの特徴です。ユーザー設定ファイル以外にも,日本語入力,フォント設定,Xtアプリケーションのリソース(外観)調整,ソフトウエアMIDI音源のチューニングなど,Plamoにはメジャーなディストリビューションではあまり見られないさまざまな「独自のこだわり」が秘められています。以下では,Plamo-3.2の主な構成と特徴,開発上の工夫点について少しだけ紹介します。

Plamo-3.2の主なソフトウエア構成

Plamo-3.2の主なソフトウエア構成は以下の通りです。カーネルに2.4.20*1,gccに2.95を採用するなど,やや安定性重視の構成となっています。カーネルやCライブラリ(glibc)には最新のセキュリティ対策パッチと,ビデオ出力を高速化するDRM(Direct Rendering Module)パッチ(drm-4.3)などを適用しています。ext3利用時にファイル・システム破壊の可能性があった不具合も修正しています。

XFree86は最新の4.3.0に,開発サイトから取得できる修正パッチのいくつかを適用し,さらにX-TTを1.4.1に更新しました*2。同時にXのフォント設定も見直し,アウトライン・フォントも積極的に利用するようにしました。また,デスクトップ環境KDEをバージョン3.1.2にアップグレードしたことで高速化も実現しました。特にWebブラウザ機能を持つファイル・マネージャ「Konqueror」の高速化には著しいものがあります。Konquerorは,Plamoインストーラのお勧めコース「l」でインストールすれば,AfterStep環境やqvwm環境からもすぐに利用できるようになっています。

  • kernel-2.4.20+ext3バグ修正パッチ,PC98用も2.4.20カーネルに更新
  • gcc-2.95,perl-5.6.1
  • glibc-2.2.5
  • XFree86 4.3.0 + X-TT 1.4.1
  • Tcl/tk 8.3.5
  • Wazilla-1.3e,Emacs-21.3
  • ptex-3.1.2,xdvik-22.40v-j1.13
  • gs-7.07(229種類の出力デバイスに対応)
  • KDE 3.1.2,KOffice 1.2.1,kdevelop 3.0a4

日本語入力環境を改善

メーリングリストや掲示板では,Linux初心者が頻繁に,X Window System環境で日本語入力を開始する方法を質問する姿が見られます。Windowsしか知らないユーザーにとっては,日本語入力を開始する際の入力キーが「Shift+Space」であったり「Ctrl+\」であることを想像しにくいのが原因です。であれば,日本語入力開始キーをWindowsと同様のものにすれば,初心者にも分かりやすいのではないでしょうか。

非アンチエイリアス設定

写真2(a) 非アンチエイリアス設定時の表示例

ゴシック系アンチエイリアス設定

写真2(b) ゴシック系アンチエイリアス設定時の表示例

アンチエイリアス設定-みかちゃん

写真2(a) アンチエイリアス設定「みかちゃん」の表示例

Plamo-3.1/3.2ではこのような考えから,日本語入力ソフト「kinput2」と,Emacs用の日本語入力ソフト「Tamago」のソフトウエア修正と設定ファイル変更を行っています。これにより,従来のキー操作は維持しつつ,日本語106キーボード利用時には,Windowsと同様に「Alt+半角/全角」,「変換」,「無変換」,「カタカナ/ひらがな」,「F6」,「F7」,「F8」といったキーによる日本語入力操作が可能になりました。kinput2ではさらに細工をして,106キーボードでの完全な「かな入力」を実現しています。ローマ字入力/かな入力は,~/.cannaファイルのcanna-input-methodの値を変更して切り替えます。

また,skkinput,sj3,nicolatter,anthy,oyatu,jmodeといったさまざまな日本語入力関連のパッケージを用意していますので,これらを自由に利用できます。このように,日本語入力もPlamoで充実している部分の一つです。

3種類のKDEフォント設定を用意

フォント設定にも力を注いでいます。Plamo-3.2では,フォントの管理・文字描画機構であるXftの新版「Xft2」が取り込まれたXFree86 4.3.0を採用したこともあり,Xft対応アプリケーション向けの設定などを追加しました。また,TrueTypeフォントの設定も従来より充実させています。Plamo-3.0で採用していたXFree86 4.2.0には,X-TTにXの不正終了を引き起こす致命的な不具合があり,標準ではTrueTypeフォントを多用しない設定にせざるを得ませんでした。XFree86 4.3.0ではこの問題が解消したため,TrueTypeフォントを積極的に利用する設定を追加しました。とはいえ,商用ディストリビューションのように有償フォントをバンドルすることができませんので,提供できるフォントの種類に限りがあります。設定の際には,これが苦悩の一つとなっています。

幸いな事にGUIツールキット「Qt」では,フォントの一部を他のフォントで置き換える「Font Substitution」機能が利用できます。これを利用すると,アルファベット部分と日本語部分で別のフォントを使うといった設定が可能になります。Plamo-3.2では,より美しい表示が可能になるように,同機能を活用した複数のフォント設定を標準で用意しています。例えば,KDE向けのフォント設定では,次の3つの設定を標準で用意しています。

  1. 非アンチエイリアス設定
  2. ゴシック系アンチエイリアス設定
  3. アンチエイリアス設定 "みかちゃん"

最初の「非アンチエイリアス設定」は,ビットマップ・フォントを多数利用してクリアな文字表示を実現する設定です。アンチエイリアス処理による文字のボケが生じないので,低解像度表示の際にも可読性が低下しません。また,負荷の高いアウトライン・フォント処理が少ないことで,マシン・パワーが不足ぎみな環境でも快適に利用できます(写真2(a))。

2番目の「ゴシック系アンチエイリアス設定」は,比較的高解像度な表示環境で美しい文字表示を実現する設定です。この設定では,基本的に「Nimbus Sans l」と「東風ゴシック」を利用します。TrueTypeフォントが主体となりますので,文字をどの大きさにしても美しい表示が得られます*3(写真2(b))。

3番目の「アンチエイリアス設定 "みかちゃん"」は,オリジナル・フォント「みかちゃん」を全面的に採用した設定です。アンチエイリアスを施すことで,手書きフォントの質感を引き出すことができます(写真2(c))。

AfterStep利用時のデスクトップ画面

写真3 AfterStep利用時のデスクトップ例

qvwm利用時のデスクトップ画面

写真4 qvwm利用時のデスクトップ例

古いマシンへの配慮

Plamoは古いマシンでも利用できるように配慮して作成されています。例えば,標準カーネルはi386用プロセッサ向けにコンパイルされていますので,i386以降のx86互換プロセッサを搭載するPCであれば,どれでもPlamoを稼働させられます。インストーラには,ディスクの消費量をできるだけ抑えるようにパッケージを厳選した「s」というお勧めインストール・コースも用意されています。そのため,古いPCを再生利用する用途に適しています。古いPCでも,うまくソフトウェアを組み合わせる事で,文書作成やメール送受信用の端末として活用できるでしょう。

軽量デスクトップ環境整備にも留意しています。例えば,Plamoのお勧めウインドウ・マネージャである「AfterStep」(写真3)には,リソース消費量の増えた現行バージョンではなく,Classic-1.1をベースに独自保守したものを採用しています。これには,KDEのテーマの一つ「Keramik」に合わせた外観の調整機能強化や,XPM画像表示の高速化を施しています。AfterStep Classicは他のウインドウ・マネージャと比べてメモリー消費量等が少ないため,古い機種でも負担にならず,軽快で美しいデスクトップを利用できます。

Windows95風の操作性や外観を提供するウインドウ・マネージャ「qvwm」も標準提供しています(写真4)。qvwmも軽快で充実した機能を持つウインドウ・マネージャです。柔軟なユーザー環境設定機能も魅力的です。Plamoでは標準でこの2つのウインドウ・マネージャとKDE向けの設定を用意しています。また,fvwm2やmwm,twm向けの設定もあります。

低スペックPC向けのWebブラウザとしては,テキスト・ブラウザ「w3m」のほか,追加パッケージとして「Netscape Navigator 4.8」を用意しています。Netscape Navigator 4.8のLinux版はやや不安定と言われていますが,Plamoでは独自の安定化措置を施すことで安定性を向上させています。

おわりに

Plamoについての情報は,PlamoのWebページ(http://plamo-linux.jp/)などから入手できます。同ページはユーザーの手によってメンテナンスされていて,充実した情報源となっています。また,ユーザー参加型サイト「PukiPlamo」(http://plamo.linet.gr.jp/)のような親しみやすい情報源も利用できます。情報サイトへのユーザー参加もPlamoの特色の一つと言えるでしょう。

ここまで,Plamo-3.2に関して思いつくことを書いてみました。Plamoにはここで紹介したほかにも,さまざまなこだわりや,商用ディストリビューションでは考えられないような「遊び心」がつまっています。皆さんもPlamoをインストールして,ぜひそれらを見つけてみてください。ディストリビューション本体はもちろん,Webページやメーリングリストで,「Plamoならでは」といった部分をユーザーのみなさまに楽しんでいただけたら,開発者の一人として幸せに思います。


*1 kernel-2.4.21のソースは,contrib-3.1以下に収録しています。

*2 X-TT 1.4.1にはXFree86-4.3.0リリース後に見つかった深刻な問題に対する修正を含んでいます。

*3 低解像度表示の場合,アンチエイリアス処理を施すと文字の可読性が低下します。そこで筆者は,東風フォントに欠けているサイズのビットマップ・フォントの製作も進めています。



Copyright (C) 2000-2007 Nikkei Business Publications, Inc. All rights reserved.
記事中の情報は、記事執筆時点または雑誌掲載時点のものです。
このサイトに掲載されている記事,写真,図表などの無断転載を禁じます。
詳しくはこちらをご覧ください。