プロの講師として、データ分析や問題解決(ロジカルシンキング)などの研修を実施していると、新しいスキルを学んだ後に成果を出せる人とそうでない人に、はっきりと差が出る。その理由として過去2回で「社員がスキルを使うインセンティブが用意されていない」「スキルを試す時間が確保されていない」ことを挙げた。

 今回は、最後の3つめの原因を考えよう。誰がデータ分析のリスクを引き受けるのかという「責任の所在」の問題である。覚悟と言い換えてもよい。データ分析の世界では、リスクテイクが常に付きまとう。しかも上記2つの問題とは異なり、最後にリスクを負うのは大抵、データ分析をする本人である点が決定的に違う。

自分はどこまでリスクテイクできるか

 対象がデータ分析であろうとなかろうと、今までルーチンでこなしてきた仕事以外に新しいことを始めるには、何らかのリスクを伴う。大別すると、2つのリスクが考えられる。

・既存の仕事に対するリスク

 いつもの業務にデータ分析の結果を当てはめてみたものの、すんなりと仕事が進まず、かえって時間がかかってしまうことはよくある。いつも通りのアウトプットを出すだけなら、普段のやり方でもっと短時間で済んだのに、となる。(一時的かもしれないが)作業スピードの面でパフォーマンスを落としかねない。

・関係者に対するリスク

 データ分析者が時間をかけて、それなりのアウトプットを出してきたとしよう。すると次に、その分析プロセスや手法を知らない人たちに分かりやすく説明する場面が来る。だが「よく分からない」「そんな方法は知らない」といった声が関係者から相次ぎ、結果的に却下されてしまう可能性がある。

データ分析には当事者と関係者の両方にリスクが伴う。最後は分析者個人が責任を負うことが多い
データ分析には当事者と関係者の両方にリスクが伴う。最後は分析者個人が責任を負うことが多い
(出所:データ&ストーリー)
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 想像してみてほしい。組織にとって大事な意思決定の局面で、あるメンバーがこれまで見たことも聞いたこともないデータ分析の結果を持ってきた。さて、あなたはそれに基づき、今までとは違う意思決定を下せるだろうか。

 そんな変わったものは受け入れず、今までと変わらぬプロセスを踏んで意思決定してさえいれば、少なくともマイナスな結果にはならないだろうと思うのが普通だ。あなたには、新たな意思決定の結末の責任を取る覚悟ができているだろうか。ここで多くの人は萎縮してしまう。

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