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v6ピープル

異業種からのマルチキャスト

竹中清裕 2003/03/03 ITpro

 スカイ・パーフェクトコミュニケーションズ(略称:スカパー)には,放送用の市販CS衛星チューナを利用し,衛星通信サービスを企業向けに提供している事業部がある。他の衛星通信会社も同様であるが,この部署も構造上の阻害要因を2つ抱え,ソリューションを検討していた。

 1つ目の阻害要因は,地上専用線の高額な利用料にある。企業が衛星通信を利用する場合,アップリンク(打ち上げ)拠点とユーザー企業のスタジオを,映像専用線やATM専用線で結ぶ必要があるが,このアプローチ回線費用が高すぎるのだ。特に通信の企業ユースは,放送のように24時間フルに映像配信をしているわけではなく,1週間に数時間程度の利用となる企業が多い。その数時間のために高額の専用回線を引くことを強いられてしまっている。

 これに加えて,アップリンク拠点(アップリンク)が東京・大阪に限られているのも問題だった。地方からの映像伝送を試みた場合,地上のアプローチ回線費用が衛星利用料を上回ってしまうことがほとんどである。これが,多拠点に一斉同報配信できるというコスト・メリットを持つ,衛星通信の導入を阻む大きな要因となっている。

 2つ目の阻害要因は,アンテナ設置にかかわる問題である。スカパーの事業は衛星事業であり,何はともあれ受信アンテナを設置しないとサービスを提供できない。ところが,企業向け通信の受信場所はビルや地下にある場合が多く,想像以上にアンテナ設置が難しい。他にも,衛星がある南々西向けにアンテナが設置できなかったり,家主が設置を拒否する場合もある。

 また,アンテナを設置できても,地上30階建ての屋上から共聴システムを利用して1階まで配線しなければならないというようなこともある。このような場所では,工事費が数百万円に及ぶことすらある。

 これらの事情から,IPを想定したBフレッツなどの光ファイバによる足回り回線を利用し,エンコードしたストリームをIPに乗せ,ユーザー企業に安価で提供しようというアイデアが生まれた。まずはユニキャストで検討を始めた。

 だが,映像事業者が利用するという前提の運用レベルで検討してみたところ,ユニキャストではなく,マルチキャストであることが望ましいという方向性が見えてきた。主な理由は2つある。1つは,当該ストリームが正しく映像を構成しているかどうかを多くの場所で確認する必要があるから。もう1つは,アンテナ設置が難しい拠点に対する映像伝送サービスの実現手段を考えると,IPマルチキャストがふさわしいからである。

 とはいうものの,IPマルチキャストをIPネットワーク上で実現するのはけっして簡単なことではない。フラットな広域イーサネットでも,MPLSでも,一般的なインターネットであっても,マルチキャストには冷たいのだ。これはネットワーク設計とルーターの負荷計測の設計が難しいことに由縁する。

 それでもマルチキャストというソリューションの実現方法を根気よく探っていたところ,朗報が持ち込まれた。タイミングよく,好意的にネットワークを提供してくれるキャリアが出てきたのだ。そのキャリアはIPv6で実現するという。こうなれば,マルチキャストのネットワークを構築するには,IPv6しかない。

 通常,衛星ではトランスポート・ストリーム・パケット(衛星で利用されるパケット構成)を利用しており,ネットワークでは,ATMセルに乗せて利用する。しかし,この方法は業務上の専用線通信には利用できるが,企業向けや一般向けには適用しにくい。特に企業通信を考えた場合,IP利用が重要なポイントになることは明らかだ。

 その一方,IP伝送であっても,映像伝送となるとATM並の安定した帯域確保が求められる。QoS(diffserv)が利用でき,UDPパケット・ストリームを安定的に送出できなければならない。ところがこの帯域確保というIPv4の世界ではなかなか難しい仕組みだが,最近のIPv6ルーターには標準的な機能として備わっているという。

 IPv6を調べ始めたのはこのマルチキャスト環境の強化という観点からだったが,それまでの私のIPv6についての知識は,先生や学者さん向けの先端ネットワークという位置付けづけだったり,いつかグローバル・アドレスが枯渇するとIPv6になるらしいという程度のものだった。

 今でも放送や通信のシステムを作るとき,IPv4プライベート・アドレスとNATがあれば十分通用する。しかし,IPv6を調べていくと,より家電的であり,放送システムに近い要素を持っていることにも気づく。マルチキャストを含む放送的なコンテンツ伝送,個人認証モデル,課金モデル,対話型テレビ会議システム,プラグ・アンド・プレイなどの実現はIPv6では現実味を帯びるが,NAPTやNATのある世界では考えられない。そもそも視聴に関する考え方は,新たな配信への糸口であるように思える。

 ストリーミング担当者や放送技術者は,IPv6を検討し,次世代の放送がどうあるかを検討してみるといい。今までのストリーミング技術や放送技術と異なる何かが,IPv6技術の中にある。まずは,手始めにPC。それからセットトップ・ボックス,携帯電話,PDA,カーナビあたりを研究することになるだろう。

 最終的な目的は,映像が絡むすべての製品に対し,“エニータイム(いつでも)・エニー・プレース(どこでも)・エニーフレーム(どの画格でも)”の映像伝送を実現すること。エンコード/リエンコード/トランスポートし,配信し,履歴を調査し,拡張し,トラフィック計測し・・・と,IPv6という大海に出航してみたいと思っている。

竹中清裕
 スカイパーフェクト・コミュニケーションズ入社から,データ放送・配信,システム企画,などに従事している。最近では,データ配信サブシステムを.netFrameWork上でWSDLで設計・開発。伝送系としては,昨年のスカパー2VPNサービスに引き続き,今回IPv6マルチキャスト伝送サービス及びエンコード関連のシステムを担当する。

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