ご指摘の通り,この7月1日から新しいIPv6アドレス割り振り/割り当てポリシーが世界で施行されることになりました。もともと従来のポリシーは3年以上前に暫定的に定められたものであり,IPv6特有の膨大なアドレスという特徴がルールにまったく反映されていないことや,多くの未定義の項目があるなど,特に商用化がすすむ日本やアジアの国々おいては不十分なものでした。そこで,昨年来から日本から提案を行い,このたび世界各地域のコンセンサスを得て制定されたものです。JPNICでも同様に新ポリシーによる割り振りが開始されています。ルール詳細や経緯等については以下のJPNICのお知らせをご参照下さい。

APNICにおけるIPv6アドレス割り振りに関する新ポリシーの施行
およびJPNICにおけるこの新ポリシーの即日適用について

 この新しいルールに照らしながら,「プロバイダはどうやってIPv6アドレスを取得するのか」というご質問にお答えします。

 プロバイダがユーザー向けのIPv6アドレスを得る方法は,2通りあります。一つは, JPNICあるいはAPNICから割り振ってもらうというもの。もう一つは上位プロバイダから割り振ってもらうというものです。なお,エンド・ユーザーがIPv6アドレスを取得する場合は,基本的にプロバイダに割り当ててもらうことになります。

 ちなみに,アドレス割り振り(allocation)とアドレス割り当て(asignment)は,IPアドレスの割り振り/割り当て場面では意味的に使い分けられています。アドレス割り振りは,あるアドレス管理組織(IR,internet registry)が自らの管轄にある下部のアドレス管理組織にアドレス・ブロックを与える(割り振る)場面で用いられる用語です。これに対してアドレス割り当ては,アドレス管理組織(通常はプロバイダ)が自らのサービス契約者であるユーザー(ただしIRではない)にアドレスを与える(割り当てる)場面で用いられます。

■JPNIC/APNICからもらう

 この場合,以下の条件を満たす必要があります。

  • LIR(local internet registry)であること。LIRとは,自らが提供するネットワーク・サービスのユーザーにアドレスを割り当てるIRのことで,一般にはプロバイダを意味する。JPNICで言えばIPアドレス管理指定事業者にあたります。なおAPNICはアジア地区を担当する地域IR(RIR;regional internet registry)で,JPNICは日本を担当する国別IR(national internet registry)です。
  • エンドサイトでないこと
  • /48の割り当て先の組織に対して,集約されたアドレス割り振りを通じて接続を広告することにより,IPv6の接続性を提供する計画があること
  • 2年以内に最低でも200の/48の割り当てを行う可能性があること

 この条件を満たすと,/32というアドレスが割り振られます。最初から/32では足りないというプロバイダは独自に審議資料を提出することにより,それより大きいサイズを割り振られることができます。その際にIPv4の保有顧客数を根拠として提出してもよいとされています。

 さて,アドレスを使い切ったら次のアドレスの割り振りを受けられることになっています。従来の暫定ポリシーではこの閾(いき)値が80%でした。つまり,割り振られたアドレスの8割を使い切った(ユーザーに割り当てた)段階で,次のアドレス割り振りを依頼できるというルールでした。

 新ルールではこの条件が大幅に緩和されます。この際,HDレシオと呼ばれる数値基準を用います。そしてアドレス割り当て量がこの基準で0.8となった段階で,次のアドレス申請ができるようになりました。HDレシオの詳細は省略しますが,表1に示すようなアドレス割り当て率で次の申請が可能になります。

 IPv4と違うのは,ユーザーへの割り当てが基本的に/48単位で行われるということです。HDレシオは,単に割り当てた/48の数を数えるだけで計算できます。このため,JPNICの担当業務も大幅に軽減できることが期待できます。

表1 HDレシオ=0.8のときの追加申請可能な/48アドレス割り当て量
既割り振りサイズ アドレス量 追加申請可能な
割り当て量
利用割合
/32 6万5536 7132 10.9%
/31 13万1072 1万2417 9.5%
/30 26万2144 2万1619 8.2%
/29 52万4288 3万7641 7.2%
/24 1677万7216 60万2249 3.6%
/16 42億9496万7296 5085万9008 1.2%

 この追加申請で割り振りられるサイズはデフォルトで以下のようなものになります。

 上記基準を満たす組織は,結果としてアドレス空間が2倍になるような量の追加割り振りを受けることができる

 実は,これは追加割り振りを可能な限り隣接したアドレス・ブロックから行われるようにするためのルールです。/32を保持するプロバイダは隣接/32を割り振られることにより,/31ブロックを保持することとなり,また次回には/31を受け,/30になります。これにより,一層のアドレス集約の効果が期待できるわけです。

 初期割り振りと同様,プロバイダがこれより大きい量を必要とする場合には別途審議を行うことになります。この場合,2年間の必要量を証明する文書を提出し,この量をもとに審議が行われることとなります。

■上位プロバイダに割り振りってもらう

 この場合の割り振りサイズについては上位プロバイダとの相談となります。この基準については上位プロバイダが独自にポリシーを決められることになっています。そのかわり,上位プロバイダは自らがアドレスを割り振る2次プロバイダのアドレス使用量の分にも責任をもち,その分も計上して,次回の追加申請を行うことになっています。