「TISによる取引の不当な取り消しが原因」。イーシステムは7月1日、2005年12月期(2005年1月1日~2005年12月31日)の業績予想を黒字決算から赤字決算に下方修正し、その原因を公表した。具体的には、中間決算の連結予想当期純利益を1億円の黒字から、3億3000万円の赤字に、通期の連結予想当期純利益を3億3000万円の黒字から1億円の赤字へと修正した。これに対し、TISは7月4日、「イーシステムとの当該取引の存在を認めていない」と反論の声明を出した。

 イーシステムの主張によると、イーシステムはTISを経由して、ある大手企業にCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システムを導入するプロジェクトがあった。「2004年から始まり、2006年頭に完了するプロジェクト」(イーシステムの担当者)で、システムに使うソフトのライセンス費用や保守料を2004年末に売掛金として計上した。

 さらに同社は、「今年4月に入ってTISから“TIS担当者の内規違反があったため、当該取引を取り消してほしい”という申し入れがあった」と説明する。これに対してイーシステムは取引は有効と主張し、両社の代理人が交渉を続けたとしている。

 「当該案件の売掛金の支払期限が6月30日だったため、両社は7月1日に最終的な話し合いを持ったものの話し合いは決裂した」(イーシステムの担当者)。イーシステムは話し合いの決裂をうけて、中間決算および通期の連結業績予想を下方修正した。今回の損失4億3000万円は、売掛金が回収できる見込みがほとんどない貸倒損失、つまり特別損失として計上する。そのため、売上高や経常利益は変更していない。

 TISは7月4日、損失計上の理由に同社の名前が挙がったことに対し「当社はそのような取引の存在を認めていない。事実を明らかにすべく、法的手続きに入った」とのリリースを発表した。これに対して、イーシステムの担当者は、「法的手続きの内容が分からないため、どういう対応をするかは未定」とコメントする。

 現段階でTISは「リリース以上のことは言えない」とする。一方のイーシステムは、「TISの社印が押された発注書や受領書などがそろっているなど、正式な取引と主張する根拠がある。逆に今回の問題で受けた損失についてはTISに請求する」と強気の構えだ。

鈴木 孝知=日経ソリューションビジネス
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