東洋ビジネスエンジニアリング(B-ENG)が医療機器商社のムトウ(札幌市、田尾延幸社長)から、基幹システム再構築にかかわる契約の解除と9億3400万円の損害賠償を求める訴訟を起こされた問題で、改めて1つの不採算案件によってソリューションプロバイダが受ける影響の大きさが浮き彫りになった。

 実はB-ENGは、2004年8月と11月、2005年2月の3度にわたり、2004年度の業績予想を下方修正していた。理由はOracle E-Business Suite(EBS)を使ったシステムインテグレーション事業における「新規領域での不採算案件発生」だ。5月18日にムトウから提訴される直前、5月12日には2004年度の決算発表があった。その席でも千田峰雄社長は、同事業で大型の不採算案件が発生し、その1件で約3億円の利益が消えたと認めている。

 この案件こそ、B-ENG社内でも最大の不採算案件と言われるムトウ向けの案件だった。ムトウは「当初2004年夏の稼働を予定していたが、2005年春にずれ込んだ」とコメントしている。B-ENGは火消し要員の投入や、次の案件に人を出せないことなどにより、大きな痛手を負った。実際、EBS関連事業の売り上げは、2003年度から10億円、利益は5億円減っている。

 同様の訴訟として、JTBとビーコンITの例がある。基幹システムの再構築をめぐり、JTBは11億6000万円の損害賠償を求め、ビーコンITは反訴して3年間争った。しかし結局は東京地裁の提案に従い、2004年9月に「ゼロ和解」した。

 B-ENGは「損害賠償責任を負う原因はないと考えている」と発表しており、裁判で争う姿勢だ。今期の業績にも影響はないとしている。裁判には時間がかかることを考えると、どちらに転んでも、B-ENGの今期の業績に影響する公算はもともと低い。だが、争った末、和解金を支払うようなことになれば、来期以降の業績に影響する。

佐竹 三江、鈴木 孝知=日経ソリューションビジネス
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