無料のインターネット電話用ソフト「Skype」を提供するルクセンブルグのスカイプテクノロジーズが、日本でのビジネス拡大に本腰を入れ始めた。先日には、一般電話からの呼び出しをSkypeで受けられる「SkypeIn」を日本で提供するため、IP電話会社のフュージョン・コミュニケーションズと提携した。このほど来日した、開発パートナー渉外部門を率いるレン・プライア氏に日本市場への取り組み方を聞いた。

◆スカイプにとって、日本市場の魅力は2つある。一つ目は、1億2500万人もの人口を抱え、しかもブロードバンドの世帯普及率が極めて高いこと。2つ目は、グローバルに活躍している日本企業の存在だ。高い国際通話料金を支払っている企業には、我々のソフトは大きな需要があるはずだ。

 もちろん、日本では「会員同士が無料」というIP電話がすでに普及している事情は認識している。しかし我々のソフトは単なる通話ソフトではなく、プレゼンスやチャット、ファイル転送などの機能を備えた「コラボレーションソフト」だ。特に法人ユーザーなら、生産性向上に寄与する効果を認めてもらえるはずだ。

◆法人市場開拓に欠かせないのが、連携するハードやソフトの充実だ。特に、日本では「グループ代表着信」などの独自の企業文化がある。セキュリティの観点から、ファイル転送を禁止したい、Skypeのクライアントを管理したいといったニーズもある。

 そこで我々は、Skypeを完成されたソフトではなく「プラットフォーム」と位置づけている。このような、企業のニーズに合わせたSkypeの機能拡張や、情報システムとの連携は、ぜひパートナーに腕を振るってもらいたい。すでに、ハードではバッファローが販売するUSBフォン、ソフトではサイボウズやネオジャパンのグループウエア、アリエル・ネットワークのコラボレーション・ソフトなどの対応ソフトがある。今後も日本で開発パートナーの参加を呼びかけていく。

◆ 連携するソフト開発を促すため、当社はAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)を無償公開している。もちろんSkype自信も、無料のまま法人向けソリューションに活用できる。

 現状で、技術サポートはオンライン上で英語でしか提供していない。ただし、日本語による技術フォーラムを立ち上げる計画を進めている。当社スタッフが回答するだけでなく、フォーラムの参加者同士が技術情報を交換できる。

 またSkype対応製品を開発するパートナーに対しては、当社が設けた品質基準をクリアしたことを示す「Skype Certified」の認定制度を用意している。売上高の2~4%を認定料としているが、制度の立ち上がり期でもあり、現状は交渉で決めている。ただし、認定取得は必須ではない。

 法人・個人を問わず、当社の大きな収益源は、「SkypeIn」「SkypeOut」、それに6月13日から始めた「Skype Voicemail」という一部の通信サービスである。法人向けソリューション自体で、当社が対価を得ることはない。

◆日本法人を設立するかは未定だが、日本市場での取り組むべき課題は4つある。開発パートナーとの連携強に加えて、(1)アフィリエートプログラムなどを使った、Skypeのプロモーション、(2)フュージョンとの提携を含めた、一般電話網との接続機能の強化、(3)ユーロ建てだけだったSkypeOutなどの販売を円で行うといった、販売方法の改善--の3つである。

玄 忠雄=日経ソリューションビジネス
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