ベリングポイントの細谷孝幸氏

 「IP電話の導入目的は企業によって違うが、すべて『投資』と扱われていないか。ケースに応じて『コスト』として取り組めば、正しい導入効果が得られる」--。東京・池袋のサンシャインシティ文化会館で開催中の「IPテレフォニー&ケータイソリューション2005」では、20日の基調講演を務めたベリングポリント ITアーキテクチャ戦略グループの細谷孝幸ディレクターが、IP電話の導入目的を正しく捉える重要性を説いた。

 IP電話の導入で陥りやすい落とし穴として細谷氏が指摘したのは、「目的をはっきりさせずに導入の見返りを問うこと」。こうした企業ユーザーは、IP電話の導入を「投資」と見なし、数値化しやすい「効率」ばかりに関心が向いているという。例えば、増収などの実証しにくい投資効果よりも、「電話の取り次ぎのムダ時間が減った」などの効率化が訴求される。その結果、使い勝手などユーザーの視点が無視され、IP電話が根付かない要因にもなりうるという。

 そこで細谷氏は、企業の目的によっては、IP電話への出費を、オフィス賃料や光熱費などのように、目的に応じて企業活動に必要な「コスト(経費)」と捉えるべきと訴える。これによって、使い勝手などユーザーの視点に立ったIP電話の導入環境に配慮が向かう。結果として、数値化しにくい定性的な導入効果が高まるという。

 この環境整備で重要なのは、企業のユーザー部門におけるコミュニケーションの在り方を正しく分析すること。細谷氏は、IP電話の導入検討の際に、現場のコミュニケーションを「誰が(who)」「どこで(where)」「何を(what)」「どうやって(how)」の“3W1H”で分析し、またコミュニケーションの性格(表現の複雑性)を「情報共有」「知識交換」「業務共有」の3段階に分類する手法を披露。こうした分析を事前に行うことで、自社にIP電話システムがどのくらい適合するのかを把握できるとした。

 IP電話やビデオ会議の導入で効果を上げられる企業の姿とは、人が仕事をこなす場所が分散しており、コミュニケーションにも複雑な表現を必要としている場合。またプロジェクト型業務、フリーアドレス制とも相性がいい。さらに、実際の導入効果を高めるには、ユーザーがコミュニケーションの変革を意識する仕掛けを準備したり、オフィス環境(レイアウトや就業規則)も合わせて整備するなどの工夫が欠かせないとした。
(玄 忠雄=日経ソリューションビジネス)


5月19日~20日、サンシャインシティ文化会館(東京・池袋)で開催(日経BP社主催)。
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