住友信託銀行は、VoIPコンタクトセンターを中核に顧客との新しいダイレクトチャネルを実現しようとしている。2004年11月から推進中で、コールセンターと営業店を密接に連携させることで顧客にきめ細かなサービスを提供し、リテール事業を強化するのが狙いだ。さらに、退職した銀行員を活用するなど、在宅オペレータへの展開も視野に入れ、業務効率の向上にもつなげる。東京・池袋のサンシャインシティ文化会館で開催中の「IPテレフォニー&ケータイソリューション2005」では、同行でリテール企画推進部の副部長を務め、現在は埼玉・越谷支店長の富松哲哉氏が、「VoIPが拓く近未来型ダイレクトチャネルの世界」のテーマで講演した。

 住友信託銀行のダイレクトチャネルへの取り組みは、97年からのイン/アウトバウンドのテレフォン・バンキングをはじめ、2000年にはインターネット・バンキングなどに展開していた。しかし従来システムやPBXの制約もあり、席数の拡大に対応しにくかったという。加えて、規制緩和で扱う商品が増えるなど複雑化する業務形態についていけなかった。そこで、これらを解決するため新しいコールセンターの構築が求められていた。

 VoIP技術を使えば、いったんコールセンターで顧客からの電話を受けてオペレータが営業店などに転送する際もスムーズになる。たとえば、オペレータが転送相手の状況をコールセンターの画面で見ながら、タイミングなどを判断することもできるからだ。「こうしたきめ細かなサービスはVoIP技術を使わないと難しい。システムを企画した当初はVoIP技術を使っているケースはほとんどなかったが、当行がやりたいことが実現できると考え、これ以外にありえないと判断して採用した」(富松氏)。

 新システムでは沖電気工業のCTstage4iサーバーを導入し、席数は約120席。約50カ所の営業店とはWANで結んでおり、営業店にもソフトフォンを使った1~2席のミニコールセンターの設置を検討している。再構築の結果、勘定系や投信関連など複数システムの画面が統一されて操作性が向上したほか、顧客が住友信託銀行に抱える複数サービスの口座を1回のオペレーションで一括処理できるようになった。このほか、顧客属性や利用チャネルに応じたデータ検索も容易になり、キャンペーン対応も効率化できたという。「今後はWebコラボレーションの機能も導入し、顧客とオペレータを音声だけでなく画像でも情報共有できるようにしたい。新しいインフラをリテール事業の中核チャネルと標榜しており、さらなる業務改革やCS向上、収益拡大につなげたい」と締めくくった。

(大山繁樹=日経ソリューションビジネス編集)


5月19日~20日、サンシャインシティ文化会館(東京・池袋)で開催(日経BP社主催)。
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