イー・アクセスは、2006年度中の参入を目指している携帯電話事業に関して、自ら提供する携帯電話サービスのほか、モバイルインフラを第三者に貸し出す卸し売りサービスも手掛けると表明した。貸出先はインターネット接続事業者などに加え、ソリューションプロバイダを想定している。特にソリューションプロバイダに対しては、「我々が接点を持たない法人向け市場では、ぜひモバイルソリューションに昇華させて顧客を開拓してほしい」(種野晴夫社長)と、法人の顧客開拓力に期待している。

 携帯電話会社の卸し売り回線を利用したモバイル事業者は「MVNO(仮想移動体通信事業者)」と呼ばれる。すでにPHSサービスでは、富士通や京セラコミュニケーションシステム(KCCS)、日本通信などが、Willcom(ウィルコム)のインフラを借りて、法人向けモバイルソリューションを開発して販売している。イー・アクセスから卸売りを受けるソリューションプロバイダなどは、このMVNOとして事業を展開することになる。イー・アクセスは、直販と並行してMVNOを手掛けるメリットとして「家電量販など我々が自ら手掛けるチャネルと競合しない販売チャネルで、顧客ベースを広げてもらえる」(種野社長)点を挙げている。

 今回の記者会見では、携帯電話サービスで採用する技術方式やフィールド実験の概要も明らかにした。NTTドコモと同じ「W-CDMA」方式を採用し、サービス開始当初から「HSDPA(ハイ・スピード・ダウンリンク・パケット・アクセス)」を使ったメガビット/秒級の高速パケット通信サービスも提供。パケット通信には、パソコンとの接続も含めて、制約のない完全定額性を導入する方針だ。2006年度中のサービス開始後は、3000億円の設備投資で5年以内に人口カバー率95%以上のインフラ整備を進める考えだ。まず10%のシェア獲得を目指す。

 サービス開始に向けて、フィールド実験の実施も固めた。今秋をメドに総務省から実験局免許を取得し、都内を対象にしたフィールド実験を開始する。実験用設備は、コンペの結果、米ルーセント・テクノロジーと富士通の2社からの納入を決めた。実際の設備投資でも、この2社が受注獲得で優位な立場を築いたといえる。

玄 忠雄=日経ソリューションビジネス

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