ITSSユーザー協会は、経済産業省が策定したITスキル標準(ITSS)の効果的な導入を協会の登録アドバイザーがガイドする「ITSSアドバイザー制度」を設け、2005年1月からサービスを提供開始する。合わせて、ITSS策定時に参照した英国のスキルフレームワーク「SFIA(Skills Framework for The Information Age)」の普及団体である英SFIA Foundationと提携し、ITSSの普及活動を加速させる。英SFIA Foundationのオペレーションズマネージャー、ロン・マクラーレン氏に、英国でのSFIAの普及状況や、ITSSユーザー協会との協力内容などについて聞いた。

◆英国では、企業内の人材のスキル開発を組織立って行う動きが加速しており、SFIAへの関心が高まっている。ユーザー企業がITをアウトソーシングしようというトレンドが続く中、外部から調達するITスキルの内容を理解するためにも、スキルフレームワークが非常に重要になる。現在では、ユーザー企業のSFIA活用は、社内のITスタッフの管理に活用されている。まだ社外のIT人材の調達をSFIAに基づいて行うまでには至っていないが、今後はそういう使い方にも広がっていくだろう。

◆企業のSFIA導入のきっかけは企業が抱えている課題によって様々だ。例えば、人事担当マネジャーが、人材スキルを評価できなかったり、人材開発計画が立てられなかったりする課題を解決するために、SFIAを適用するケースがその1つ。また、伝統的な部門ごとの人材配置から、プロジェクトごとに人材を柔軟に配置する形態に変える場合に、仕事内容とスキルのマッチングにSFIAを利用するケースもある。最近SFIAを導入したあるITベンダーは、自社内のソフトエンジニアのスキルレベルを6段階で定義していたが、その仕事内容の記述はレベル間の違いが明確になっておらず、スキルレベルは使い物になっていなかった。その企業は、SFIAによって、人材のスキルレベルを再定義することにした。

◆英国ではSFIAはすでに浸透し始めている。SFIA Foundationで調査した範囲だけでも、SFIAを全面的に採用した企業が40社、特定の領域で採用した企業が100社、採用を検討している企業が100社あった。いずれも英国では著名な企業が取り組んでいる。英国政府も、企業が自分たちのITスキルの管理をすることを推進しており、2005年以降、企業に対してアニューアルレポートでスキルに関する情報を含めるように義務づけることになっている。

◆日本ではキーワードとしてのITSSは浸透していても、どう適用していいか分からないという企業が多いと聞く。SFIAでは、認定されたコンサルタントが企業にコンセプトを説明するなどの取り組みで、企業への導入を推進している。こうした方法は日本でも有効なはずだ。日本のITSSのコンセプトはSFIAと非常に似通っており、SFIAでの成功事例を情報提供するなどして、ITSSの普及に協力していく。日本のITSSは、英国に比べても、政府が積極的に推進している。すぐに英国に追いつくはずだ。

森重 和春=日経ソリューションビジネス

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