ソフトバンクは8月30日に記者会見を開き、子会社の日本テレコムが、独自通信網を使った固定電話サービス「おとくライン」を12月1日から始めると発表した。新サービスで注目できるのは、その販売戦略。大手の1次販売パートナーを募った上で、そのパートナーにも設備投資の一部を負担してもらうスキームを採用するのだ。また今回のサービスは、大口割引の恩恵に浴せなかった中小企業などの法人顧客獲得に力を入れる考え。その手法として、従来からの電話系の販売代理店に加えて「事務系やIT系などの、新たなパートナー開拓も進める」(日本テレコムの富村隆一副社長)方針だ。

 記者発表に臨んだソフトバンク孫正義社長が、電話系販社以外のパートナーとして名前を上げたのが、7月に業務提携を発表したコールセンター大手のベルシステム24。つまりベルシステム24は、日本テレコムの1代理店として、テレマーケティングを通じておとくラインの販売活動を行いながら、その顧客を受け入れるための設備投資の一部も負担する。実際に顧客が獲得できれば、販売奨励金や投資に対するリターンという収入が得られる。

 電話会社を選択できる「マイライン」などのように、従来の固定電話の販売活動は「1回線ごとに1万円」などの奨励金を代理店に支払う形態が一般的。今回のように、代理店に設備投資まで負担してもらうのは珍しい形態といえる。また新サービスでは、販売奨励金の形態も改める。従来のように、回線獲得ごとに1次金を支払うのではなく、「ユーザーが契約を続ける限り収入の一定割合を分配する」という継続型に変える。これにより、ソフトバンクグループは設備投資額を「数百億円」(孫社長)に抑えられるほか、長期利用ユーザーの獲得を促せる。

 なお、日本テレコムが提供する「おとくライン」は、既存のメタル回線を使ったまま、ユーザーがNTTとの契約を打ち切って加入できる固定電話サービス。個人向けでは月額基本料が約200円安価なのが特徴。法人向けでは、日本テレコムの通常料金(割引サービスなし)に対して、県内市外と県外に55%の割引を適用する点などが特徴だ。

玄 忠雄=日経ソリューションビジネス

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