電力会社系の通信事業者であるパワードコムの中根滋社長は7月28日、6月末の社長就任後初めてとなる会見に臨み、同社の経営再建策を発表した。中根社長は、今期下期から営業黒字化を達成し、長期では2003年度で1700億円弱だった法人事業の売上高を2006年度に倍増させることを公約。その上で「その後数年間で売上高1兆円を達成を目指す。決して、大ぶろしきとは考えていない」と語り、株式公開やM&A(企業の合併・吸収)も駆使しながら、NTT対抗勢力の筆頭になる決意を語った。M&Aは、自らの出身母体であるIT企業との連携も視野に入れ、IT・通信を融合させたサービスを提供できる体制作りを目指す。

 パワードコムは、減増資で累積損失を一掃させる財務体質の改善策などを5日前に発表済み。今回はこれに続く再建ステップとして、(1)ネットワーク分野のコンサルティングサービスに本格参入、(2)販売プロセスを標準化する、(3)上位の顧客100社に「アカウントプラニング」を導入する--といった営業強化策を打ち出した。アカウントプラニングとは、顧客のプロフィールや経営状況、経営課題・目標などを精査し、各顧客に対する年度の事業計画を策定する活動のこと。中根氏の出身母体であるIBMなどで導入されている手法だ。将来的にはアカウントプラニングを上位1000社と「他社にない規模」(中根社長)に広げていく考え。

 経営再建策の第2段階では、営業要員を200名規模で増員する予定である。また、サービスの収支管理を厳しく強化しコスト削減も進めることで、早期に利益を出せる体質を築き上げる。商品・サービス面では、従来からのネットワークサービスのほかに、運用、ネットワークアプリケーションと、サービス・商品を垂直方向に拡充していく。また水平方向では、光ファイバー通信のほかに、電力線通信や、業務提携に基づく無線通信分野のサービスも開発する方針だ。

 会見で印象的だったのは、1兆円企業になるべく「通信・IT業界の分け隔てなく、機会があればM&Aも駆使して事業を拡大していきたい」と中根社長が明言した点だ。「当社は、多くの(IT系・ネットワーク系)パートナーに支えられている。むやみに上位レイヤー(アプリケーションなど)に進出して関係を壊すわけにはいかない。まずはレイヤー3やレイヤー4(TCP/IP層など)が活動の中心になる」と前置きした上で、「もし当社が分相応に上位レイヤーに進出できるなら、“1点豪華主義”で行きたい」と語った。つまり、特定のアプリケーション、ソリューション提供で最強の企業を買収したり提携を結びたい、と言うわけだ。

玄 忠雄=日経ソリューションビジネス

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