2003年度は、ITサービス産業における需要の底打ちが鮮明になった。前回調査(2002年度)では対象企業の半数弱に当たる73社にとどまっていた増収企業が、今回は6割弱の91社まで回復。平均の売上高伸び率も、前回の1.2%から2.3%と倍増した。ただし前々回調査(2001年度)の平均7.9%増には遠く及ばず、売上高の回復力は弱い。

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 このため成長性(売上高伸び率)ランキングでは、企業グループ内での再編など特殊要因で売上高を拡大した企業が上位を占める結果となった(表1[拡大表示])。その中で、“自力”で売上高を大きく拡大したのが第4位のニイウスや、第6位のネットワンシステムズなどだ。売上高伸び率は、ニイウスが前回の25.0%から今回は34.5%、ネットワンシステムズも16.3%から31.0%と、前年より成長性を高めた。今期も、2社ともに約20%と高い成長性を維持する計画だ。

 2社に共通するのは、ハード販売が好業績をけん引したことである。特に売れ行きが好調なのが、ネットワーク分野。ADSL(非対称デジタル加入者線)などのブロードバンドサービスでしのぎを削っている通信事業者がIP基幹網の投資に動いているほか、一般企業が自社ネットワークの大容量化に着手し、ルーターやスイッチが売れている。

 収益力(売上高営業利益率)ランキング1位は、営業利益率26.3%のオービック。2位以下に8ポイント以上の差を付け、5年連続で首位の座を堅持した(表2[拡大表示])。オービックは、自社製のERP(統合基幹業務システム)製品OBiC7を中心に、製品の販売から導入、サポートまでをワンストップで提供することで、高い利益率を確保している。ただし、2003年度は不採算案件の発生などで期初目標の2ケタ増益には届かず、利益率は昨年の26.3%から横ばいとなった。

 2位のサイバネットシステムも、CAE(コンピュータを使ったエンジニアリング)関連のパッケージソフト販売で、高い利益率を確保している。製造業の設備投資回復も追い風となって、営業利益を前年比26.9%増と大きく伸ばし、利益率は2.2ポイント向上して18.1%となった。

 一方、3位のジャステックは昨年の19.0%から2.9ポイント、4位のフューチャーシステムコンサルティングは昨年の16.9%から4.1ポイント、利益率を下げた。ジャステックは、主力の金融分野の受注が低迷したほか、顧客からの価格引き下げ圧力にさらされ、原価率が悪化した。フューチャーシステムコンサルティングは、2つの大型の不採算案件が、足を引っ張った格好だ。

 生産性(1人当たり経常利益)ランキングは、ネットワンシステムズが3年連続で1位を獲得。以下、NRIデータサービスが2位(前回3位)、サイバネットシステムが3位(同2位)と続いた(表3[拡大表示])。順位変動はあるが、トップ10には7社が前回調査と同じ顔ぶれの企業が並んだ。

 しかし生産性の金額自体は、前回から大幅に向上。ネットワンシステムズが840万円から1076万円と28.1%改善したほか、NRIデータサービスが755万円から1006万円と33.2%増、サイバネットシステムが804万円から1005万円と25.0%増の生産性を達成した。生産性で上位企業が「1人当たり1000万円」という大台を超えたのは2年ぶり。トップ企業の生産性は、かつての好況期に近い水準に回復してきた。

 他の企業では、ニイウスが前回調査の15位から8位にランクイン。一方、前回11位に順位を落としたアルゴグラフィックス(前々回は2位)は10位、同様に14位に順位を落としたCTC(同3位)は11位と生産性の回復は鈍かった。また9位だった住商情報システムは今回、19位に順位を落とした。

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(日経ソリューションビジネス)