富士通と子会社の富士通研究所は、無線LANや携帯電話のパケット通信を使って1対1や1対多の通話ができる、トランシーバー技術を開発した。PDA(携帯型情報機器)上で動くソフトウエアとして実装しており、フィールドでの動作検証や対象端末の検討を踏まえて、2004年度に製品化する予定だ(写真)。工場や店舗などで用いる構内用トランシーバーのほか、屋外で使う業務用無線の代替といった用途を狙う。

 無線データ通信インフラを使ったトランシーバー技術は「PoC/W(Push-to-talk over Cellular/Wireless)」と呼ばれ、通常の携帯電話より通信コストを下げられたり、1対多といった携帯電話とは異なるコミュニケーション手段を提供できる点が特徴だ。パケット通信では1秒以上のデータ遅延が発生するケースもあるが、片方向で交互に話をするトランシーバーならばある程度の遅延まではユーザーが許容できる。

 ただし、遅延が変動したりパケットが途切れるなどの現象は、通話品質の劣化にそのまま直結する。そこで富士通などは、遅延の変動やパケット損失など検出して通話品質を自動的に最適化する音声処理技術を開発した。また、パケット通信区間では音声を圧縮することで、従来比半分以下の1秒以内という応答性能を実現した。

 今回のソフトは通常のトランシーバー機能のほか、音声を同報する範囲を自由に指定できたり、通話と同時に文字ベースでチャットができるなど、PDAの情報処理能力を生かした機能を盛り込んだ点も特徴。PDAで稼働する業務ソフトと連携も図ることができ、既に富士通が開発した位置情報などを管理する、いわゆるプレゼンス管理用ミドルウエア「FLAIRINC(フレアリンク)」との連携機能を備える。PDAのほか携帯電話機で動くトランシーバーソフトも実現可能で、同じ端末上で動く業務ソフトと合わせて、法人向けソリューションとして製品化する方針だ。

玄 忠雄=日経ソリューションビジネス

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