CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスを提供するセールスフォース・ドットコムは今年4月、カスタマイズ機能を強化した新版salesforce.com Spring'04のサービスを開始した。米セールスフォース・ドットコムのテクノロジー、マーケティング&システムズ社長のパトリシア・ソルツ氏に製品戦略などについて話を聞いた。要旨は以下の通り。

◆4月に発表した新版では、標準タブの名称変更や、カスタマイズタブの作成が可能になったほか、プログラミングの知識がなくてもCRMの設計やカスタマイズができるツールSalesforce.com Studioを新たに追加したことで顧客は高度なカスタマイズが可能になった。また、個別アプリケーションの開発・運用プラットホームであるsforce.com 3.0は、Webサービスとの親和性を高めた。顧客がカスタマイズしたsalesforce.comのデータと連携ができ、ユーザー企業はあらゆるシステムとsaleseforce.comを統合できる。

◆カスタマイズ機能の強化は、当社のパートナーにとっても、ビジネスチャンスの拡大につながる。システムインテグレータやISV(独立系ソフトベンダー)、VAR(付加価値再販事業者)などは重要なパートナーだ。米国では既に100社以上のパートナーがあり、彼らとの協業によって顧客に付加価値を提供するためのエコシステムを推進していく。例えば、タブレットペンを使って、手書きの情報をsaleseforce.comのサービスに取り込むシステムを構築するなどはその一例だ。

◆第一世代のASPが期待通りの成果を上げられなかったのは、クライアント/サーバー型のパッケージをそのままASPサービスに適用しようとしたからだ。メインフレームのアプリケーションをクライアント/サーバー上でエミュレートして利用するのと同じで、ユーザー企業には新しい価値を提供するわけではなく、新しい機能を追加していこうとするとコストが高くなるばかりだった。当社が提供する第二世代のASPは、最初からインターネットを前提に開発したサービスで、プログラムをアップデートする時も顧客に新しい価値を提供できるし、当社も収益を得られるモデルになっている。当社は1年間に3~4回のバージョンアップを実施しているが、顧客は何ら手間をかけることもなく、新しい機能を利用できる。今後も機能強化を続けていく。

◆当社のほか、アマゾン・ドットコムやeベイ、ヤフーなど、ネットワークを前提にした第二世代のサービスが成功している。eベイがオフィスサプライのサービスを提供するなど、ビジネスの分野でも浸透してきた。当社は今年3月、Web会議のASPサービスを提供するWebEXコミニュケーションズと提携した。夏に発売する新版には、WebEXのサービスを組み込んで連携できる仕組みを追加する。

◆2000年にサービスを始めて以来、急速に売り上げを伸ばしてきた。2003年の売上高は9700万ドルで、前年の5000万ドルから倍増した。今年1月時点で、世界で9500社、14万人、日本国内では400社、6000人が当社のサービスを利用している。IBMやサン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカードなどがオンデマンドコンピューティング戦略を進めていることも、オンデマンドサービスという当社の戦略が正しかった証拠だ。今後5年間は、倍々ゲームで成長が続くだろう。

森重 和春=日経ソリューションビジネス