約450万人の顧客の個人情報が流出したソフトバンクBBをはじめ、企業の個人情報漏えい事件・事故が相次いで発生している中で、ソリューションプロバイダは情報漏えい防止対策関連の製品やサービスを相次いで投入しているが、内部からの漏えい防止対策の効果を訴えるセキュリティ商戦が特に活況を呈している。

 最近の情報漏えい防止対策製品で目立つのが、不審行為の抑制や操作ログ管理など、社員の行動監視にフォーカスしたツール。インテリジェントウェイブ(IWI)は今年2月から、ネットワークと端末の操作を監視して、不審な操作を発見できるソフト「CWAT」の出荷を開始した。「当初計画した予算の12倍の売れ行きで販売体制を再三増強した」(IWI)。また、ソリトンシステムズ(東京都新宿区、鎌田信夫社長)は、企業内のパソコンの操作ログを記録し追跡できるソフト「InfoTrace」を7月から出荷を開始する予定だ。ファイルの名称変更やコピーなどの履歴を逐一収集して、漏えい時には元ファイルから持ち出しまでの履歴を追跡できる。正式出荷に先立つ3月26日から、機能を限定したプレリリース版を販売している。このほか、クオリティ(東京都千代田区、浦聖治社長)をはじめとするIT資産管理ツールベンダーも、モバイル端末の使用管理などで情報漏えい防止対策に有効な点を売り込む。

 ファイルを暗号化して外部流出を防ぐためのソフト「ezFile Security」を販売するのがイージーシステムズジャパン(東京都中央区、澁谷紳一郎社長)。利用者単位での操作制限が可能な新バージョンの販売を4月から開始した。東京海上火災保険の「個人情報漏えい賠償責任保険」とのセットも用意しており、今年9月までに約4億円の売り上げを見込む。

 ツールだけではなく、セキュリティ診断サービスも相次いで登場している。三菱電機インフォメーションシステムズ(東京都港区、笠井鯉太郎社長)は、4月から情報漏えいの脆弱性を検査するサービスを開始した。入退室の管理や端末の履歴の保存など約200項目にわたる項目をチェックしてもらい、問題点を分析する。価格は70万円で、結果に基づいて、導入したほうがよい情報漏えい防止対策ツールを提案する。セコム情報システム(東京都新宿区、伊藤博社長)は、脆弱性診断などのメニューを、企業の要望に応じて松、竹、梅の3つのコースを用意した。早急に対策をしたい企業を対象にした「梅コース」では、資産の洗い出しとリスク分析、運用基準の整備、セキュリティ・ツールの実装をセットにし、350万~700万円で提供している。

 情報漏えい事件、事故だけでなく、2005年4月からは個人情報保護法の施行も控えており、情報漏洩防止対策の商戦は、今後ますます過熱化しそうだ。

中井 奨=日経ソリューションビジネス