ドットコム系企業として成長著しい米セールスフォース・ドットコムの日本法人(本社東京・渋谷区)の新社長に、前ソフトバンク・コマース社長の宇陀栄次氏(47)が4月1日付けで就任する。宇陀氏は、既に3月25日付けで米セールスフォースの上級副社長に就いており、1日から日本法人社長も兼務する。米セールスフォースは宇陀氏が日本IBMやソフトバンク・コマース時代に培った営業・アライアンスの積極的な手腕に期待。日本市場でパートナリングモデルを確立しながら本格的な展開を図ることになる。

 セールスフォースは自社開発のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)ソフトをASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)モデルで、主に中堅・中小企業を対象に全世界111カ国で展開、1万社、15万人のユーザーにサービスしている。売り上げを毎年倍々ゲームで伸ばしており、数四半期前から業績が黒字転換した。米市場では、アマゾンドットコム、イーベイ、グーグルと並ぶ4大ドットコム系企業の1角を占めており、2004年中に米グーグル同様、IPO(新規株式公開)予定の銘柄として話題の企業だ。

 またセールスフォースは、同社のASPモデル成功のインフラ基盤である自社開発の「サーバー・アプリケーション・プラットフォーム」を一般顧客企業やパートナーに広く公開するsforceを2003年6月から展開中。sforceは、顧客企業やパートナーが自社開発のアプリケーションソフトをセールスフォースのASPサービスと同じようにオンデマンド型アプリケーションとして、初期設備投資なしに容易に展開・利用することが可能である。既に2000社がパートナーとして登録され、セールスフォースのCRMサービスと連携したり、パートナー同士のソフト連携、顧客企業のグローバルオンライン処理など、アプリケーションサービスの適用範囲を急拡大している。日本でも近く大々的にsforceのプロモーション活動を開始する計画だ。

 宇陀氏は、日本IBMで大手企業担当の営業部門を経て、社長補佐、製品事業部長、理事、情報サービス産業事業部長などを歴任した。特に初代の情報サービス産業事業部長に就任以降、それまでシステムインテグレーション事業で競合関係にあった新日鉄ソリューションズや電通国際情報サービスなどの大手ソリューションプロバイダとの間で提携・協業する道筋を開き、富士通やNEC、日立製作所など各社のアライアンスモデルのひな形となった。2001年にソフトバンク・コマースに転じてからはインターネットによる企業間取引やヤフーブロードバンド事業の法人市場開拓などを担当した。

北川 賢一=日経ソリューションビジネス主任編集委員