「ITSS(ITスキルスタンダード)」の普及を目指す非営利組織、ITSSユーザー協会が12月15日に発足した。ITSSは、経済産業省が各種ITサービスの提供に必要な能力を体系化して定義したものだ。ITSSユーザー協会設立の中心になったのは、NECソフトや富士通、日立システムアンドサービスなど、理事を務める10社で、いずれもITSSを自社の人材育成制度に適用するなど、積極的に採用を進めてきた企業。

ITSSユーザー会はまず、経済産業省が策定したITSSの抽象度の高い表現を、製品名を挙げるなど、より具体的で実用的なものにする作業を行う。さらに、システムインテグレータ(SI)、ソフトウエアベンダー、(ユーザー企業の)IT部門といった業態別のスキルマップのひな型を作成する。今後、会員企業を同業のグループに分けて議論を進め、ひな型の開発と実証実験を進める。

 理事長に就任した唐津一東海大学教授は「他業界、例えば電気通信の世界では、電気通信主任技術者という国家資格があり、ビルごとに資格保持者を置かなければいけないといったルールが確立している。それに比べてITはとても重要な存在になってきたにもかかわらず、スキルを正当に評価する仕組みが全くない」と、標準的なスキル項目の定義や、それに伴う評価などの仕組みの必要性を強調する。

 同協会の最大の課題は、参加企業の確保だ。非営利組織なので、当面期待できる活動資金は会費だけだからだ。現時点の正会員は21社で、それもソリューションプロバイダやソフト/ハードベンダー、人材派遣サービス会社、IT関連の教育サービス会社といった提供側の企業がほとんど。2004年中に、ユーザー企業も含めた参加企業の勧誘に力を入れ、真の意味でのユーザー会への脱皮を急ぐ。

佐竹 三江=日経ソリューションビジネス