米ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)大手の米セールスフォース・ドットコムが、個別アプリケーションをネット上で開発・運用できる新サービスSforce.comを6月に開始した。日本法人もSforce.com展開に向けたパートナー獲得に動き出す。CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)のASPサービスで成長する同社が、Sforceに乗り出す背景や狙いを、米本社の製品開発担当シニアバイスプレジデントのパーカー・ハリス氏に聞いた。

◆Sforce.comとはどんなサービスか?
Webサービスの技術を使ったアプリケーション開発プラットホームを使用料金ベースで提供するサービスだ。顧客はXML(拡張マークアップ言語)ベースのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を使って、当社のSalesforce.comのサービス内容をカスタマイズしたり、既存システムとの統合を図ったり、独自のアプリケーションを開発したりできるようになる。これまでもSalesforce.comと既存システムを結ぶためのインタフェースは提供してきたが、別にサーバーが必要な仕組みだった。Sforce.comなら、顧客はサーバーへの追加投資などなしにサービスを連携できる。

◆各社がユーティリティ・コンピューティングに乗り出そうとしている中、Sforce.comの強みは何か?
当社サービスSalesforce.comを24時間365日、提供し続けるために構築してきたシステム基盤と運用ノウハウが既にあることだ。単にアプリケーションを稼働させるだけでなく、システム運用基盤やセキュリティ基盤、検索エンジン、顧客ごとの利用状況を把握し課金する仕組みなど、ネットワーク上で多数のエンドユーザーにサービスを提供するために必要なITインフラは幅広く、複雑だ。そこを切り出したのがSforce.comであり、新たな事業の柱に育てる。

◆Salesforce.com はパッケージ不要を訴えた。Sforce.com は何を訴えるのか?
個別システムの受託開発ビジネスから顧客にとって価値のない部分を排除することだ。パッケージでも個別開発でも、顧客が求めるのはアプリケーションサービスだけだ。だが前者ではパッケージ流通・保守のコストをユーザーに強いる。個別開発でも、データモデルや運用基盤、セキュリティなど共通モデルで十分なシステム設計・運用の工程は少なくない。ITサービス業界は、そこを毎回設計することで売り上げを伸ばしてきた。Sforce.comは、そうした共通部分をITサービスとして提供し、顧客はアプリケーションの設計と利用に集中できるようにする。ネットワークを前提にすれば、クライアントサーバーではなく「クライアントサービス」の時代になる。

◆Sforce をベースにSalesforce.comの競合サービスが生まれる可能性がある。
顧客ニーズは多様化しているし、機能拡張したい気持ちは強いので、その可能性は否定しない。だが当然、当社もSalesforce.comのサービス拡充を続ける。具体的には、会計機能の提供、マイクロソフトOfficeとの連携、業種別テンプレート(ひな型)の提供、データ分析機能、ポータル(玄関口)機能などを、ここ1年間をメドに追加・拡充する計画だ。

志度 昌宏=日経ソリューションビジネス