アイルランドのアイオナテクノロジーズは今年7月、ミドルウエア連携ソフト「ARTIX」を欧米市場で出荷、ユーザー企業のシステム統合ニーズへの対応を強化している。欧州やアジアなどの営業を統括するジェームズ・ブリッジズ副社長に、国内でのARTIXの販売戦略などを聞いた。要旨は以下の通り。

◆ユーザー企業のCIO(最高情報責任者)は、複雑化するITオペレーションのコストを下げ、経営効率を高めることに頭を悩ませている。企業内の複数のシステムを統合するニーズに応えるソリューションとして、EAI(エンタープライズ・アプリケーション統合)ツールが利用されてきたが、アプリケーションを統合するのに膨大なコストがかかるなどの問題で、必ずしも成功しているわけではない。

◆ARTIXは、IBMのMQやBEAシステムズのTuxedoなど、各種ミドルウエアを高速にブリッジするエンタープライズ・ミドルウエア・インテグレーション(EMI)製品だ。標準のWebサービス技術を使って、異なるミドルウエア上で構築したユーザー企業の既存資産を生かし、低コストでシステムを統合可能だ。社内のシステムをWebサービス化して統合したくても、セキュリティや性能、信頼性に不安があってちゅうちょするユーザー企業は少なくないが、ARTIXを使えば、既存システムのミドルウエアが持つ信頼性や拡張性、性能を生かしてWebサービスのシステムを構築できる。

◆各種のミドルウエアを使って顧客の基幹システムを構築してきたソリューションプロバイダにとって、顧客の既存システムを生かして低価格のシステム統合を提案できるメリットは大きい。そのためARTIXの市場投入に当たっては、従来のパートナーに加え、MQやTuxedoなどを使ったシステムを得意としてきたソリューションプロバイダなどを、パートナーとして開拓していきたい。特に、金融やテレコムのユーザーは重要なターゲットで、こうした業種に顧客基盤を持つソリューションプロバイダとの協業にも力を入れていく。

◆ARTIXは、2003年7月から欧州や北米市場で出荷を開始した。先行ユーザーで成功モデルを確立し、2004年早々にも日本市場に投入する計画だ。ARTIXの投入をテコに、日本市場でのビジネス拡大を加速させる。日本市場は、欧州、北米に継ぐ重要なマーケットであり、ワールドワイドに占める日本市場での売上比率を、早急に10%まで高めたい。

森重 和春=日経ソリューションビジネス