ERP(統合基幹業務システム)最大手のSAPジャパンが、SCM(サプライチェーン管理)とCRM(カスタマーリレーションシップ管理)の両分野で新製品を発表した。「SAP SCM 4.0」と「同CRM 4.0」の2製品がそれで、SAPジャパンは今期にソフト製品の売り上げを30%増やす方針だが、そのうち半分を両製品が稼ぐ計画を立てている。

 これまでSAPジャパンは主力製品であるERP製品との連携機能を前面に掲げてSCM製品とCRM製品を販売してきたが、今後はそれぞれの製品の機能が充実している点を強調して売り込む。「新製品は機能を強化しており、ライバル製品に負けないだけの機能がある。“ベスト・オブ・ブリード”というコンセプトで様々な製品を集めて使うのではなく、これからは1流製品の集合体である“ベスト・オブ・スイーツ”という概念で売り込む」(藤井清孝社長)。

 SCM4.0では計画系のAPO(Advanced Planning & Optimization)、他社との協業を促進するICH(Inventory Collaboration Hub)、イベント管理のEM(Event Management)の3種類のモジュールを追加した。このうち、EMではICタグの推進団体である米オートIDをベースにしたICタグに対応することを表明しており、欧州ではメーカーと小売業をつないだ実証実験にも参加している。SCM4.0の出荷は今秋を予定。APO単体で40社の導入を目指し、60億円弱の売り上げを見込む。

 CRM4.0ではベースとなるCRMモジュールに加えて、自動車や化学、消費財、小売り、電力、ガスなど23業界別のソリューションをあらかじめ盛り込んでいる。業界別ソリューションには既存の有力顧客が開発したカスタマイズのノウハウを盛り込んでおり、CRM4.0ユーザーはこうしたソリューションを自由に選ぶことができる。同製品は既に国内で12社が導入することを決めており、2003年12月末までに30社への導入を目指す。SAPジャパンでは今期、旧CRM製品も含めて売上高は約40億円を予定。これまで他社のCRMパッケージを主に扱ってきた有力ソリューションプロバイダ3、4社と戦略的な提携を8月までに締結するなどパートナー戦略も見直す。

渡辺 一正=日経ソリューションビジネス