個人の情報発信が主だったブログが、企業のビジネスでも使われ始めてい る。Web サイトと組み合わせ、新商品の販促や最近では社内の情報共有 を狙った“イントラブログ”も出てきた。ブログ構築ソフトの数も急増して おり、市場が急速に立ち上がってきた。



 ブログとは、日記をつける感覚で簡単に作成、更新できる簡易型ホームページのこと。個人ユーザーの間で人気に火が付いたが、今では企業が活用する「ビジネスブログ」も注目を集めている。

 JR品川駅近くにある日立製作所ハーモニアス・コンピテンス・センターで6月10日に開かれた「イントラブログセミナー」には、ユーザー企業のシステム担当者ら約100人が出席。披露された事例やデモンストレーションに参加者は熱い視線を送っていた。セミナーを企画したのは今年2月にビジネスブログ普及を目的に発足したイントラブログ・コンソーシアム。6月のセミナーは2回目だが「定員を超える申し込みがあった」と、イントラブログ・コンソーシアムの幹事を務める日立製作所ブロードバンドサービス本部の松澤茂コラボレーションウェア設計部長は手応えを語る。秋には第3回目のセミナーを開催する予定だ。

 総務省が5月に発表した「ブログ・SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)の現状分析及び将来予測」の調査では、ブログ市場全体で2004年度は6億8000万円だが、2006年度は140億6000万円に成長すると予測。このうちユーザー企業がブログ構築ソフトの購入や保守に支払う「ブログソフトウエア市場」は2004 年度の9000万円から2006年度は18億5000万円と20倍強に拡大する見通しだ。

販促ツールとして提案

 ビジネスブログとして、ユーザー企業が相次いで採用しているのが企業PRや新商品の販促。Webサイトのコンサルティングを行うアークウェブ(東京都中央区、山岸次郎社長)の中野宗副社長は「消費者とコミュニケーションしやすくなる」とメリットを語る。

 USEN傘下の映画配給会社、ギャガ・コミュニケーションズは、6月から新作映画のプロモーションにブログを活用。インプルーブテクノロジーズ(東京都千代田区、小田士朗社長)が提供するASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービス「TRACON」を映画の公式サイトと連携させた。トラックバックと呼ばれる機能で、宣伝効果を高めている。

 トラックバックとは、あるブログやホームページの内容について言及している他のブログの記事のリンクを表示できるようにするもの。例えば今夏公開された「皇帝ペンギン」では、公式サイトにトラックバック用のURLを公開。映画を観賞した個人が自分のブログで映画の感想を書き、公式サイトに簡単にリンクすることができるようにした。公式サイトを見れば個人のブログも閲覧でき、映画の評判を知ることができる。ギャガの青木基晃サイバーメディア戦略グループマネージャーは「ブログで映画の話題が取り上げられれば口コミの説得力が生まれ新たなお客を呼べる」と話す。

(中井 奨)