富士通システムソリューションズが、横浜都市みらいから、ASPサービスを使ったテナント管理システムの刷新を受注した。ASP市場を独占するNEC勢からのリプレース受注だった。 (文中敬称略)



 「赤字を覚悟してでもこの案件を取らなければ、今後もNECにやられっぱなしになります」—。富士通システムソリューションズ(Fsol)流通ソリューションサービス本部流通ソリューション営業部の高木秀雄は、上司の担当役員にこう訴えた。すでに企画部門やSE部門とは、現場レベルで話をつけた。あとはゴーサインを待つだけだった。

 2004年11月、横浜都市みらいは、同社が横浜市都筑区で運営する「ショピングタウン あいたい」のテナント管理システムを再構築した。それまでのクライアント/サーバー型のシステムを、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスを使って刷新するもの。受注したFsolにとっては、ショッピングセンター向けのASPサービス「WebSERVE/テナント管理」の第一号案件となった。

 ASP型のテナント管理システムは商談当時、NECグループの独占市場。富士通グループはASPサービスの商品化すらできておらず、後塵を拝していた。しかも「あいたい」の既存システムは、NECグループの大手ソリューションプロバイダA社が手掛けていた。当然A社は今回の商談にも参加し、客観的に見て、「あいたい」の業務を知るA社優位の案件だった。

コスト低減狙いASPを本命に

 横浜都市みらいは、横浜市や銀行などが出資する第3セクターで、2004年7月に「港北都市開発センター」など3社が合併して設立した。「あいたい」は、港北都市開発センターが98年から運営していた商業施設の1つだ。約50店舗の各テナントにPOS(販売時点情報管理)レジを貸与し、A社のテナント管理システムを使って、売り上げの集計や請求業務、クレジット業務の管理などを行っていた。

 だが、使っていたPOSレジが生産中止になるなど、システムの見直しを迫られていた。機器のリース切れを控えていたこともあって、2003年秋、システム再構築を検討し始めたのだ。再構築後はPOSレジを使った店舗売り上げの収集をやめ、クレジットカードの精算業務で使うCAT端末から、現金取引を含む日々の売り上げデータを入力して管理することにした。

 システム再構築の相談を受けたA社は、従来通り社内にサーバーを設置する案と、ASPサービスを活用する案の、2つの方向性を提案した。

(森重 和春)