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 人的支援の差が明暗を分ける─。本誌の前身である日経システムプロバイダの時代から数えると、今回で7 回目となるパートナー満足度調査で、このような実態が明らかになった。前回調査に比べて、各メーカーの総合満足度は軒並み上昇する中で、総合満足度上位のメーカーには、「営業支援」や「担当窓口」などでの高評価が目立つ。ハード(PC サーバーなど)では日立製作所、ソフト(データベースなど)では富士通が大躍進を果たした一方で、外資系メーカーも、Web アプリケーションサーバーで日本BEA システムズが、日本IBM もUNIX サーバーやグループウエアなどで健闘した。また、今回からIP 電話システムと法人向けデータ通信サービスを、新たに調査対象にした。これらは、ソリューションプロバイダの商材としてますます存在感が増している。IP 電話ではNEC が、法人向けデータ通信ではソフトバンクBB が首位に立った。

(中井奨、玄忠雄)


 パートナーは、メーカーに対して何を求めているのか。第7回となる今回の調査で質問した12種類の評価項目のうち、パートナーが重要視している項目は、(1)「製品」(8.1)、(2)「価格競争力」(7.8)、(3)「技術支援」(7.4)―の順となっている(図1)。


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図1●パートナーはベンダーの「製品」「価格競争力」「技術支援」を重視している

 ところが、実際の満足度を見ると、「製品」や「価格競争力」で高い評価を得ているメーカーが、総合満足度でも高い評価を得ているかというと、そうとは限らない。「製品」の機能向上は当たり前になっており、それだけでは大差がつかなくなってきたからである。

 むしろ「営業支援」や「技術支援」「担当窓口」「柔軟さ」など、パートナーとメーカーが直接的なやり取りをする場面での対応についての評価の差が、総合的な満足度に大きな影響を与えている。

 一例として、PC サーバーを取り上げてみよう。PC サーバーは、企業の情報システムがメインフレームやオフコンからオープン環境に移行する中で、拡販のために各メーカーが間接販売強化にしのぎを削っており、パートナー戦略の象徴とも言える。総合満足度1 位の日立は、「製品」や「価格競争力」の評価は、実は最も低い。「製品」では日本IBM に、「価格競争力」ではデルに、それぞれ大差をつけられている。しかし、「営業支援」「技術支援」「担当窓口」「柔軟さ」では最も高い評価を得て、総合満足度は前回の4 位から一気にトップに駆け上がった(表1)。


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表1●パートナー満足度ランキング

 ソフトでも、同様の傾向が見られる。例えば、データベースソフトでは、富士通は「製品」の満足度で日本オラクルに0.5 ポイント差をつけられたが、「営業支援」や「担当窓口」などの評価で他社を引き離して、総合満足度は首位に立っている。

 パートナーからも、人的支援の充実を要望する声は多い。メーカーの対応のまずさが商談で命取りになりかねないからだ。「技術や営業についての問い合せに対して、明確な回答がなかったり、スピードが遅いとビジネスチャンスを失う」と、あるパートナーは言う。

富士通が7 分野で首位に
 12分野中7分野でトップとなったのが、富士通だ。ハードでは、UNIX サーバーとネットワーク機器、ソフトでは、データベースソフトなど対象となった5 分野すべてを制した。

 富士通が大躍進した背景には、2004 年にパートナー戦略を大幅に見直したことがある。2004年6月から展開しているパートナー支援プログラム「パートナーアリーナ」がそれだ。新プログラムの開始と同時に、営業、SE、企画スタッフの3 者が一体となってパートナー支援に当たるパートナービジネス本部を新設、パートナー支援要員も増やして組織的な強化を図ってきた。

 パートナーアリーナでは、パートナーが開発したソフトと富士通のプラットフォーム製品との連携を検証施設を使って動作検証したり、専門技術者を派遣して技術的なアドバイスを行うなど、技術的な支援を充実。パートナーの商談時には、パートナーと密に連絡を取り合うようにしている。

 また、パートナーの経営層との話し合いの場を設けるなどパートナーと接触する機会を増やすように努めた。富士通の中村巧経営執行役パートナービジネス本部長は「支援がパートナーに浸透してきており、確実に手応えを感じている」と、胸を張る。

 前回調査では、苦戦した外資系メーカーだが、今回の調査では健闘が目立つ。例えばWeb アプリケーションサーバーで日本BEA システムズが富士通と並んでトップに立ったのをはじめ、ネットワーク/システム運用管理ソフトでは、コンピュータ・アソシエイツ、ベリタスソフトウェアが総合満足度で6点台に乗せた。また、前回は各分野で大きく順位を落とした日本IBMは、UNIX サーバー、PC サーバー、グループウエアの3 分野で2 位に浮上した。

価格と収益のバランスが課題
 「互いにもうかる仕組みを作ろうという意識がが希薄ではないか」。パートナーからは、こんな疑問の声も上がっている。

 IT サービス業界でデフレが進行し、メーカー各社は競争力のある低価格を設定する。「価格競争力」への評価は上がる一方だが、収益性とのバランスが問題になる。実は、パートナーにとっての重要度は「収益性」が4 番目に高い。

 「価格競争力」でパートナーから高い評価を得たとしても「収益が取れなくなってしまう」と嘆く声も出ている。低価格戦略を進めれば、利幅が薄くなりパートナーの収益を圧迫しかねない。

 「IT サービス産業は全体の収益性が低下している。各工程において、パートナーの役割に応じた収益配分を求める」と、あるパートナーは言う。収益面でパートナーと“Win-Win”の関係を築くための支援策は、大きな課題だ。

パートナー満足度調査

 2004年11月10日に「2004年度パートナー満足度調査」として、全国のソリューションプロバイダの社員3640人に、回答用紙を郵送した。アンケートではハード、ソフト、サービス合わせて12 分野について(1)12種類の評価項目に関する重要度、(2)取り扱っている製品、サービスのメーカーとキャリアの別に各評価項目の満足度、(3)同じくメーカー別の総合満足度、(4)各メーカーとの取引継続意向(ロイヤルティ)を聞いた(上限3 社)。重要度、各評価項目の満足度、総合満足度は10 点満点(0 ~10)で評価。ロイヤルティは、現在取引があるメーカー、キャリアとの取引の優先度について「上げたい」「現状を維持したい」「下げたい」の3つから選択してもらった。

 11月30日までに299 件の回答を得た。製品・サービス分野およびメーカー、キャリア別にカウントした有効回答数は4411件だった。各分野で有効回答数が20件以上あったメーカーとキャリアを、パートナー満足度やロイヤルティの順位を付ける対象にしている。