今年4月のe-文書法施行によって、電子化できる紙文書の範囲が拡大する。対応ソリューションを売り込むソリューションプロバイダの間では特需への期待が高まっている。

 「オフィスの片隅に置かれた複合機が、システムの一部になる」。リコー販売事業本部ソリューションマーケティングセンターソリューション企画室の平岡昭夫室長がこう語る背景には、主力製品であるデジタル複合機(MFP)を、単なる“ハコ”ではなく、e-文書法対応ソリューションにして売り込もうという狙いがある。

 リコーは1月中にe-文書法対応ソリューションの専門部署を立ち上げる。15人から成るこの部隊では、e-文書法に対応した商品の企画やマーケティング活動を行う。その第一弾として、e-文書法に対応したシステムの検証を行うためのMFPを開発。MFPと会計システムとを連携させたシステムの検証などでソリューションプロバイダと協力し、e-文書法対応ソリューションを提供する準備を進めている。

 e-文書法とは、3万円以下の領収書や見積書、取締役会の議事録など法令で保存することが義務付けられている文書を、電子化して保存することを認める法律の通称。既に自社で一貫してコンピュータで作成した帳簿類に限定して電子保存が認められているが、今後は紙文書をスキャナーやMFPを使って読み込んだデータも原本として保存できるようになる。

 日本経済団体連合会(経団連)の試算によると、紙の書類の保存にかかるコストは、税務関係だけで経済界全体で年間約3000億円という。電子保存できる文書の範囲が拡大すれば、紙の保存コストの負担が激減できるとして、企業からの期待を集めている。

対応ソリューションが続々登場

 e-文書法は、ソリューションプロバイダのビジネスにとっても“追い風”として期待できそうだ。紙文書の電子化や電子データ保存のためのシステム構築、データ活用などのソリューションを売り込む好機になるからだ。

 e-文書法対応ソリューションの提供に向けていち早く動き始めているのが、前述のリコーをはじめとする複合機メーカーだ。富士ゼロックスが1月から販売開始するMFPの新製品「Apeos」は、紙文書を電子化できるだけでなく、他社製の業務システムと連携させるための機能も搭載している。今後発売する予定の「証憑ソリューション」は、Apeosで紙文書を電子化したデータとワークフロー、会計システムを連携させて活用する仕組みを売り込む。

(中井 奨)