業界動向

ITレポート(動向/解説)

日経ソリューションビジネス

2004年度は18.7%増の643億円規模
富士通、大塚、住商情報がトップ3形成

中堅・中小企業向けERPの市場動向

2005/01/11
出典:2004年12月30日号  52ページ
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

中堅・中小企業向けERP市場が伸びている。2004年度は対前年比18.7%増の643億円になる見通しだ。ベンダー別のシェアでは、富士通、大塚商会、住商情報システムがトップ3を形成している。

 一時ほどのブームは下火になったものの、ERP(統合基幹業務システム)ソフト市場は拡大を続けている。なかでも、年商500億円未満の中堅・中小企業向けのERPソフトの伸びが著しい。

図1●ERPソフトの市場規模推移(ソフトのライセンス売上高)
図2●中堅・中小企業向けERPソフトのベンダー別出荷金額シェア(2003年度)
表●中堅・中小向けERPソフトを販売する主要ベンダーの戦略
図3●ERPソフトの競合相関図

 ノークリサーチの調査によると、ERPソフトの市場規模(ソフトのライセンス売上高)は2002年度が739億円、2003年度が837億円で、2004年度には963億円に達する見込みだ(図1[拡大表示])。伸び率について見ると、2003年度は対前年度比13.2 %増、2004年度は同15.0%と2桁成長を続ける。2005年度も同15.8%と予測され、2010年度には1423億円規模まで成長するとみられる。

 このうち中堅・中小企業向けERPソフト市場は、2002年度467億円、2003年度542億円(対前年度比16%増)と拡大し、2004年度はついに600億円を超え643億円(同18.7%増)に達する見込みだ。大企業向けERPの2004年度の伸び率は8.3%増だから、10ポイント以上高い。中堅・中小企業向けERPが市場全体に占める割合も、2002年度は63.2%、2003年度は64.8%、そして2004年度は66.8%と着実に増えている。今後も、ERP市場の成長を中堅・中小企業向けERPソフトが牽引していくことは間違いない。

中堅・中小向けが伸びている理由

 中堅・中小企業向けERPソフト市場が好調な要因として次の3つ考えられる。

(1)景気回復で投資意欲が向上

 ERP市場の好調な伸びを支える要因は、何といっても景気の回復である。2003年に景気は底を打ち、2004年は回復傾向にあった。2005年も、原油価格の高騰や米国および中国の景気の先行き不透明感があるものの、ITに対する投資意欲は堅調そうだ。

 ノークリサーチで中堅・中小企業のIT導入実態を調査したところ、サーバーを導入している企業の約7割は、イントラネットなど社内情報基盤の構築を終えていた。次に検討するIT投資の対象は基幹系システムという回答が多かった。オフコンなどの単機能の業務システムから各業務システムを統合した基幹系システムへの移行ニーズは高い。それがERPに転換する流れを生んでいる。また、IT投資促進税制の存在も、中堅・中小企業のIT投資をバックアップし、ERP導入の追い風となっている。

(2)リプレース需要が顕在化

 オフコンやPCサーバーのハードのリプレース需要が高まっていることも大きい。特に2004年は、2000年問題の対応時に導入したハードのリプレース時期となっている。一般にシステムのリース期間は5年と言われており、1999年に導入した基幹系システムのリースが切れるのが2004年になるからだ。ハードをリプレースする際に、ソフトも刷新したいと考えるユーザーは多い。

(3)ERPベンダーが環境を整備

 ベンダー側が、中堅・中小企業が導入しやすいようなパッケージと環境の提供に注力していることも要因だ。製品面では、パッケージの低価格化、使いやすさと機能の向上、部分導入が可能なERPの投入などが挙げられる。販売面では、販売チャネルの拡大による購入しやすさの向上などがある。

オフコンの基盤を持つ富士通と大塚商会

 では現状、中堅・中小企業向けERPソフトのシェアはどうなっているのか。2003年度の金額ベースのシェアをまとめたのが図2[拡大表示]である。トップは富士通で18.6%、次いで0.3ポイントの僅差で大塚商会(18.3%)が2位。以下、住商情報システム(9.8%)、OBC(6.5%)、オービック(6.3%)と続いている。

 富士通は製造業、流通業、サービス業など幅広い業種で、会計を中心にした部分的導入を進めている。最大の強みは全国展開している系列販売店と既存ユーザーの基盤だ。地方のシステムインテグレータとも密に連携しており、それにより地方ユーザーに対しても迅速なサポートを可能にし、他社との差異化を図っている。

 富士通はパートナーによる間接販売比率が70%を超えている。これらのパートナーはオフコン時代からの付き合いであり、同社との信頼関係は強固である。さらにパートナー企業が持つソフトとGLO VIA-Cを連動させることで、パートナーは自社ソフトも同時に売り込むことができる。富士通にとってもパートナーにとってもメリットのあるこの関係が富士通の間接販売を支えている。

 大塚商会は販売力と既存ユーザーの基盤、自社のサービスサポート体制が強みだ。特に、全社員が一丸となった営業活動には定評がある。営業、SE、サポート部隊などが定期的にユーザーを訪問してヒアリングを行う。そしてユーザーに必要なシステムをすぐに提案する。逆に、パートナーによる間接販売は少ない。

 ERPはオフコンなどの基幹業務システムからの移行が多いため、既にオフコンユーザーの基盤を持つ富士通と大塚商会は有利だ。既存ユーザーに提案するほうが、新規ユーザーを獲得するよりも効率がよいからだ。

 住商情報システムは住友商事グループとの連携が強みとなっている。特に住商リースとの連携は他社にない強みだ。住商リースと提携し、ProActive導入の際に金利ゼロに近い形で導入できるようにした。

 ProActiveと連動するアプリケーション群ProShopも展開し、生産管理やワークフローなど、Pro Activeにはない機能を補完し、各種ニーズに対応できるようになった。またパートナーは、自社の製品をProShopに登録することでProActiveと同時に自社製品もユーザーに提案できる。

外資系はチャネル戦略が課題

 上位6社は国産ERPベンダーが占めている。大手外資系ERPベンダーとしては唯一、SAPジャパンが4.1%で7位に食い込んでいる。SAPジャパンは、中堅・中小企業向けにSAP Business Oneを投入し、シェア拡大を目指す。日本オラクルもOracle NEOを投入した。

 SAPとオラクルにとってはこれまで、中堅・中小企業市場はメインターゲットではなかったはずだ。しかし大企業へのERP導入が一段落したことで、中堅・中小企業にも本気で目を向け始めた。

 SAPは中堅・中小企業市場を開拓するために、同社としては初めてのパートナー販売を開始した。現在約20社あるパートナーを、新規顧客を開拓するパートナーと、既存顧客へ拡販するパートナーの2つに分けた。同時に2次店を認定させ、販売網の拡大に努めている([拡大表示])。今後はパートナー販売のノウハウや、パートナーとの連携などが市場開拓のための課題になる。

 中堅・中小企業の多くはオラクル製品に対して「大企業向けで価格的に手が届かない」というイメージを持っている。それを払拭するために投入したのが1億円程度で導入可能なOracle NEOだ。オラクルの場合も、中堅・中小企業市場に強いパートナーの獲得などチャネル戦略が課題になってくる。

 また、日本の商習慣に適応したERP機能の充実も外資系大手2社にとっては課題だろう。

ベンダー間の争いがし烈に

 中堅・中小企業向けERP市場は今後どのような勢力地図になっていくのか。競合の相関関係を表したのが図3[拡大表示]である。

 円の大きさはシェアを、矢印の向きは競合先と見なしていることを示している。例えば富士通のGLOVIA-Cはシェアが一番高く、オービックのOBIC7、住商情報システムのProActiveを競合先として意識している。逆に、OBIC7、ProActive、内田洋行のスーパーカクテルから競合先として見られていることが分かる。

 GROVIA-C、ProActive、OBIC7が互いに意識し合っているのは、3つの理由がある。1つ目は3社とも年商100億から300億円の中堅企業を主要ターゲットにしていることだ。2つ目は業種に依存せず、多様な業種に対応していること。そして3つ目は、販売戦略が共通することである。3社とも財務会計から導入を進めている。

 中堅企業市場において他のベンダーから特に意識されているのがエス・エス・ジェイのSuperStreamである。上記のOBIC7、ProActiveに加えてNTTデータシステムズのSCAW、大塚商会のSMILE ieから競合先として見られている。同時にもっと企業規模が小さい中小企業向けのOBCの奉行新ERPからも競合視されている。SuperStreamの場合、主要ターゲットは、年商100億から500億円の企業だが、年商50億未満の中小企業からの売り上げが全体の15%近くあり、ユーザー層が広いことが要因だ。

 今後はこの競合図の中にSAPとオラクルの2社が割り込んでくる。両社とも大企業向けERPでの実績があり、子会社やグループ企業への展開で強みを発揮できる。

 中堅企業市場の競争が激化する一方で、中小企業市場においては奉行新ERPと大塚商会のSMILE ADの競争が強まっている。両者とも50億未満の中小企業を主要ターゲットにする。奉行新ERPはSuperStreamも競合先と見ており、中堅市場への進出を狙っていることがうかがえる。

 従来、「大企業」「中堅企業」「中小企業」の3セグメントで「すみ分け」ができていたのが、全体的に大から中へ、小から中へと、ERPベンダーの戦略のベクトルが集中しつつある。市場は拡大を続けるが、一方でERPベンダーの淘汰は進む。熾烈なサバイバル競争が始まっている。


伊嶋 謙二(いしま けんじ)

ノークリサーチ代表
矢野経済研究所を経て98年に独立し、ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている

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