どの会社も当たり前のように所有するWebサイトが逆に、企業の経営に損失を 与えかねなくなってきた。操作性の悪さなどが利用者の不満足感に直結するからだ。自社Webサイトの見直しはもとより、ユーザー企業への提案にも工夫が必要だ。

 「Webサイトの有効性が認知された結果、Webサイトにかかわる部署が増えた。それが逆に、内部の調整ごとを増やし“だれのためのWebサイトか”の焦点をぼかしている」。

 ブランド戦略などに基づいたWebサイトの構築・運用コンサルティングなどを手掛ける電通イーマ―ケティングワン(東京都中央区、宮田應俊社長)の徳丸英俊ディレクターは、Webサイトが一方通行の情報発信ツールにとどまっていると嘆く。その改善には「Webサイトの利用者像を見据え、どんな機能を実現するかの判断基準の確立が急務だ」と指摘する。

グローバル企業が見直し急ぐ

 判断基準になるのは、Webサイトについて企業としての位置付けを明記したり、画面遷移や誘導方法の統一や画面内の操作性などを定めたりした構築・運用のためのガイドライン。Webサイトのポリシー(方針)になる。

 Webサイトの役割設定があいまいだと、商品が売れないといった直接的なデメリットに加え、例えば環境経営など社会貢献活動の内容が十分に伝わらないなど企業価値そのものがダメージを受ける。Webサイトを持たないことが機会損失の時代は去り、Webサイトを公開していることが企業経営のリスクにもなる時代が訪れた。

 そのため、グローバルに事業展開する米IBMや富士通など大手ITベンダーを中心に、Webサイトの全面見直しとガイドライン導入が進む。リコーも、その1社。1995年に初めてWebサイトを公開した同社は昨年、全世界共通のガイドラインを制定した。今夏をメドに全世界のWebサイトを新ガイドライン対応に切り替える。

 西田明宏コーポレートコミュニケーションセンター広報部Webマスターは「過去はデザイン面の見直し中心だった。今回は情報構造の設計にまで踏み込んだ。何のために、何をするかを説明するための裏付けができた」とガイドライン導入の効果を話す。

(志度 昌宏)