行政の基幹系システム商談をサムスンSDSが韓国企業として初受注した。国内大手4社に打ち勝ったその提案の強みは価格ではない。 短納期、ソースコード開示という難題の克服にあった。 (文中敬称略)

 日本の社会制度を色濃く映す行政システムは、経験が豊富な国内ソリューションプロバイダの独壇場だ―。そんな業界の常識を大きく揺さぶる商談が2003年11月末に成約した。震源地となったのは佐賀市。同市が入札に掛けた基幹系システムの再構築案件を、韓国サムスンSDSが落札したのだ。

 佐賀市の案件の応札企業は5社。サムスンSDSを除く4社は「日本の大手メーカー」(佐賀市役所情報政策課長の山田將人)ばかりだった。しかしサムスンSDSは、現行システムを構築したNECや行政システム最大手の富士通などの“日本代表”をすべて敗退に追いやった。

 サムスンSDSの提案は、決して価格で他社を圧倒したわけではない。むしろ「彼らより安い提案はあった」と、提案募集を担当した情報政策課OA管理係長の宮崎徹也は語る。事実、市が落札額の上限として組んだ予算9億6390万円に対して、サムスンSDSの落札額は8億7000万円と、上限の90%強にとどまる。サムスンSDSの提案には、価格面以外に大手4社をしのいだ強みがあった。

成長の芽を日本市場に求める

 サムスン電子の子会社であるサムスンSDSは、韓国最大手のソリューションプロバイダ。今後の成長をグローバル展開に求め、欧米と中国に続く4番目の海外拠点として日本市場に参入したのは2001年のことだ。ただ、今までは行政機関のサブシステム構築などを請け負った程度。日本での基幹系システムの受注は今回が初めてだ。

 今後もこの勢いを駆って、日本での商談獲得にまい進するのか―。そんな本誌の問いを、サムスンSDSの対日営業担当者は否定する。「リスクの大きさを実感しており、獲得した仕事を成功に導くだけで精一杯だ。今はこの業務に集中し、新規の応札は一切控えている」。逆にその言葉から、日本市場参入にかける同社の決意がうかがえる。現在、佐賀市役所そばのビルの1フロアには、サムスンSDSが本国から送り込んだ開発スタッフ約60人が開発業務に没頭している。

(玄 忠雄)