客単価の下落や利用客数が伸び悩み、売り上げの減少傾向にある外食産業。BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザなどによって、消費者の間で 食の安全性に対する関心が一段と高まり、事業環境は厳しくなっている。 それでも、店舗数は増えており、競争は年々激化している。 業務の効率化やコストの削減、食の安全管理を図るため、外食産業では 情報システム導入のニーズが急速に高まっている。

 売り上げの低迷、競争の激化、食の安全問題―。外食産業は“三重苦”に見舞われている。

 日本フードサービス協会(JF)によると、ファーストフードやレストラン、居酒屋などの外食産業の2003年(1~12月)の売上高は0.3 %減と前年の実績を下回った。来店客数は前年並みで、店舗数は4.2 %増えているが、客単価が0.3%減少しており、売り上げの低迷が経営を大きく圧迫している。

 この逆風の中で生き残るためには、コスト削減が急務。また、BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザの発生、食品の偽装表示によって、食の安全に対する消費者の関心も高く、その対策も不可欠になっている。

“セルフオーダー”普及の兆し

 コスト削減を図る有力な武器として注目を集めているのがセルフオーダー式システムだ。来店客はテーブルに設置された端末でメニューを注文できる。

 焼肉チェーン店を展開する焼肉屋さかいは、2003年5月からセルフオーダー式システムの本格的な導入を開始、現在2店舗で利用している。テーブルごとにタッチパネル式の端末を設置し、画面に映し出された写真付きのメニューを見ながら、来店客はその場で注文する。混雑時に大声でホールスタッフを呼ぶ必要もなく、注文した品は確実にテーブルに届く。焼肉屋さかいの大橋雅営業本部東日本統括部焼肉事業直営担当部長は「セルフオーダー式を導入した店舗では、人件費を売上高の3%分削減できた」と効果に満足する。

売り上げが27%増えた店舗も

 居酒屋チェーン店「白木屋」などを展開するモンテローザもセルフオーダー式システムの導入を進めている。2003年9月から都内の居酒屋3店舗で試験的に利用している。これまで都心の店舗では若いアルバイト従業員を雇うのにもひと苦労で、混雑時には人手不足のために十分な接客ができず入店を断る場面もあった。それが、セルフオーダー式システムを導入したことで、混雑時でも大勢の来店客に対応できるようになった。中には、売り上げが前年比で27%増えた店舗もある。「売り上げ機会の損失を減らすことができた」と、高橋稔穂管理本部システム部システム課長は話す。

 セルフオーダー式システムはコスト削減だけではなく、接客の質の向上にも一役買っている。ホールスタッフは注文を聞く手間が省ける分、お冷やの追加や灰皿の交換などのサービスに力を注ぐことができるようになる。「サービスが向上したなどと来店客の9割は好意的な反応」と、モンテローザの高橋課長は話す。

(中井 奨)